最新記事

クーデター

戦闘続くミャンマー、市民が家を捨て森に避難 1000人超がブルーシートの難民キャンプ暮らし

2021年6月22日(火)11時24分
ミャンマーカヤ州の避難民キャンプ

今年2月の軍事クーデター発生後、いまなお武力衝突が続くミャンマーで、多くの市民が家を捨てて森林に流れ込み、ブルーシートでモンスーン(雨季)の雨露をしのぐ生活を強いられている。5月、カヤ州のキャンプで撮影。提供写真(2021年 ロイター)

今年2月の軍事クーデター発生後、いまなお武力衝突が続くミャンマーで、多くの市民が家を捨てて森林に流れ込み、ブルーシートでモンスーン(雨季)の雨露をしのぐ生活を強いられている。

森のあちこちには、数十人から1000人を超す規模の避難民キャンプが出来上がっている。東部カヤ州の戦闘から逃れてきたという人々は、食糧が不足し、疫病まん延の兆候があると訴えた。

「下痢に苦しんでいる子供たちもいる。清潔な水を手に入れるのが難しい。米や食糧を持って来られなかった人もいる」。そう話す26歳の男性は木の下の岩に張り渡した防水シートの写真を示し、「神に祈っている」と言葉を続けた。


国連の推定では、最近の戦闘で避難を余儀なくされたカヤ州の住民は11万人近くに上っている。

このほか、北部や西部で新たに発生している戦闘を逃れてきた人々を合わせると、クーデター発生以来、20万人近くの人々が自宅を追われた。これは、2017年に軍の迫害を受けたロヒンギャ族イスラム教徒70万人の大量脱出に次ぐ避難規模だ。

ロイターは軍事政権側にコメントを求めたが、接触できていない。

軍事政権は、新たに結成された「カレンニー国民防衛隊」などの反対武装勢力をテロリストとみなしている。

「カレンニー国民防衛隊」は先月から軍事政権側と戦っており、当初は軍側にも死者が出ていた。15日に地元住民の要望で一時的な戦闘停止を表明したものの、森林に避難している人々の多くは危険を犯してまで自宅に戻る意思をほとんど示していない。

カヤ州デモソ近くの村からきた男性は、「遠隔地の村の人々は停戦中に米や雑貨を取りに帰宅したが、大半は自宅にとどまる意思がない。自宅よりキャンプ地にいるほうが安全だ」と述べた。男性は、軍政への抗議デモに参加したとして軍から指名手配されている。

国連人道問題調整事務所(OCHA)は15日の報告で、地元コミュニティを支援する内外の人道援助活動は必要を満たすに至っていないと指摘。「治安の悪化と道路封鎖で人道支援のためのアクセスに困難が生じている」とした。

一部の避難民は、暗闇にまぎれて住民の去った町や村から食糧を調達し、森に持ち帰ろうとするなどしているという。

カレン族の人権団体幹部は、少なくとも3人のボランティアが支援物資を持ち込もうとして殺害されたと明かし、「人口の3分の1が今は森林に逃れている。放置すれば多くの人命が失われる可能性がある」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由
・ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏、テスラとxAIの合併否定 投資を巡り株主

ワールド

米最高裁、教育省解体・職員解雇阻止の下級審命令取り

ワールド

トランプ氏、ウクライナに兵器供与 50日以内の和平

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中