最新記事

朝鮮半島

中国「激怒」の制裁再び? 韓国・文在寅を追い詰めるTHAAD増強計画

Upgrading South Korean THAAD

2021年5月19日(水)21時31分
ユン・ソクジュン(元韓国海軍大佐、韓国軍事問題研究院客員研究員)

2020年以降、米軍はより大きな政策の一環として、THAADの拡張を熱心に進めてきた。だが、今回のことで韓国国内では新たな論争が起こりそうだ。21年の米国の国防予算案に、韓国のTHAAD拡張が韓国の費用負担で行われることが示唆されているから、なおさらだ。

さらにジョン・ヒルMDA局長は20年、在韓米軍の「統合緊急作戦要求(JEON)」に基づく調達が完了すれば、THAADアップグレードの準備は整うと述べた。

JEONとは、米軍の緊急能力獲得プロセスのうち、現場の司令官が不測事態対応作戦のために不可欠と認めた要求をいう。在韓米軍の場合、これはTHAADと米軍のパトリオットミサイルを1つの防衛システムに統合することを意味する。

これは米軍が通信システムをネットワーク化して、THAADの遠隔操作能力を獲得し、レーダー等を星州に残したまま、発射台を非武装地帯や在韓米軍の司令部(米軍基地キャンプ・ハンフリーズ)に移す可能性を示唆している。ビンセント・ブルックス前在韓米軍司令官は数年前、JEONは、北朝鮮のミサイル脅威に適切に対処するためのTHAADのアップグレードが目的だと述べている。

計画を知らされていたのは明らか

韓国政府は、一貫してこれを否定してきた。3月にソウルで米韓外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)が開かれる前にも、星州以外でのTHAADの運用や、THAADのアップグレードについてアメリカと協議したことはないと断言した。だが、その主張も近く変わるかもしれない。

実際、アメリカが韓国政府にTHAADのアップグレード計画を知らせていたことは、分かりきっている。なにしろ米軍の21年度予算案には、星州のTHAAD施設における建設作業に4900万ドルがかかるが、「韓国側の費用負担案件」と書かれているのだ。

在韓米軍は、北朝鮮のさらなる軍事力増強という問題に直面している。これには不規則な軌道を取る新型短距離弾道ミサイルのKN-23や、600ミリもの口径を持つ超大型放射砲KN-25が含まれる。

KN-23は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)で、THAADのレーダーをかいくぐるとみられることから、THAADを別の兵器とりわけパトリオットミサイルと統合することが最善策となる。28年に完成予定の新型イージス駆逐艦と組み合わせてもいい。

日本のミサイル防衛システムとグアムにあるTHAADが韓国と同じような形でアップグレードされるならば、その3つをアラスカにある米軍の司令部を通じて結ぶこともできるだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インド、米通商代表と16日にニューデリーで貿易交渉

ビジネス

コアウィーブ、売れ残りクラウド容量をエヌビディアが

ワールド

米軍、ベネズエラからの麻薬密売船攻撃 3人殺害=ト

ビジネス

米アルファベット、時価総額が初の3兆ドル突破 AI
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中