最新記事

事件

メキシコ、血塗られた選挙戦 昨秋から関係者85人が命落とす

2021年5月31日(月)18時40分

ムリエータ氏と同様、中道左派政党「市民運動」から立候補しているエリック・ラミレス氏は、武装グループから脅迫を受け、南西部ゲレーロ州における今月の夜間集会を中止するよう迫られた、と語った。

ラミレス氏はその警告を無視したが、集会が始まってほどなくして銃声が響き、観衆は散り散りに逃げた。同氏も危うく難を逃れた。

ラミレス氏は銃撃の様子を撮影した動画データをロイターと共有した。同氏はコクラという町の町長に立候補しているが、選挙運動の規模を縮小したという。地元当局と犯罪組織の癒着を告発したために狙われたとしたが、選挙戦から撤退はしないと語った。

「私の人生は劇的に変わった。家族もとても心配している。それでも私を応援してくれているが」とラミレス氏は述べた。

選挙戦からの撤退を決めた候補者の1人が、南部オアハカ市に隣接する自治体の首長に立候補する予定だった野党政治家のクリスティーナ・デルガド氏だ。

地元メディアが公開した写真によれば、今年1月、正体不明の脅迫者によるデルガト氏殺害予告が、切断されたブタの頭部とともに地元の広場に残されていた。メッセージの一部は「ここは私の縄張りだ。ボスはすでにいる。姿を見せたら殺す」と書かれていた。

デルガド氏は脅迫を受けたことを認めたが、それ以上のコメントは控えている。彼女は結局、候補者登録を行わなかった。

セキュリティ・アナリストは、選挙関連の暴力事件のほとんどは自治体レベルで起きており、麻薬密輸などの犯罪行為をこれまで以上に自由に行うため、ギャングが選挙結果に影響を及ぼそうと圧力をかけているとの見方を示した。

ティファナにあるシンクタンク、コレフのセキュリティ専門家ビセンテ・サンチェス氏は、最大の被害者は民主主義そのものだ、と指摘した。

「国内の一部地域では、多くの人々が犯罪組織の影響下にあり、何一つ保証されない」とサンチェス氏は述べた。

Lizbeth Diaz記者(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、政府非公認教会の牧師数十人拘束

ワールド

マダガスカルでクーデターの試みと大統領、兵士が抗議

ビジネス

中国輸出、9月8.3%増で3月以来の伸び 対米摩擦

ワールド

北朝鮮の潜水艦開発、ロシアが技術支援か 韓国国防相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中