最新記事

事件

メキシコ、血塗られた選挙戦 昨秋から関係者85人が命落とす

2021年5月31日(月)18時40分

ロペスオブラドール政権は21日、選挙絡みの暴力事件に関する告発や捜査を現在400件以上確認しており、148人の候補者が警護対象になっていると発表した。だが複数の調査によれば、それでもメキシコではほとんどの暗殺事件が未解決のままに終わっているという。

エテレクトは、混乱の大部分はベラクルス、オアハカ、プエブラ、ゲレーロ、メヒコ、ミチョアカンなど、互いに隣接する諸州に集中しているとしている。

エテレクトによると、ロペスオブラドール大統領が2018年7月の大統領選に勝利したときは、現在のようにパンデミックが選挙情勢に影を落とすこともなかったが、10カ月間の選挙期間中に政治絡みの殺人事件が152件発生し、そのうち26件が終盤2週間に集中していた。

メキシコの年間殺人件数はその年に史上最多を記録し、2018年12月に就任したロペスオブラドール大統領は、暴力事件の抑制を約束した。しかしその後の2年間で、殺人件数はむしろ増えている。

特に大きな影響を受けているのがソノラ州だ。ムリエータ候補は、米国系のメキシコ人モルモン教徒であるアドリアン・レバロン氏の弁護士を務めていた。レバロン氏は2019年、ソノラ州で発生した麻薬カルテルの殺し屋によるものとされる悪名高い大量殺人事件で娘と4人の孫を失っている。

この2カ月間、治安問題はメキシコにとって最大の課題の1つとされている。今月発表されたエル・フィナンシエロ紙の調査によれば、メキシコ国民の3分の2は、治安改善に向けた政府の対応に批判的だ。

ロペスオブラドール大統領の人気は依然として高いが、支持率は低下している。エル・フィナンシエロ紙の世論調査では、3月から4月にかけて大統領の支持率は4%ポイント低下して57%となった。

世論調査会社コンスルタ・ミトフスキーが毎日行っている調査からは、5月3日の鉄道死傷事故以来、大統領の支持率はさらに下落している様子がうかがわれる。

政治的な暴力と政権に対する影響について大統領府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

「恐れはしない」

ムリエータ氏はシウダード・オブレゴン市を含むカヘメ郡での不正一掃を公約に掲げていた。ギャングの脅迫には屈しないと明言し、選挙に向けたスポットCMでも有権者に向けて「恐れはしない」と語っていた。

ムリエータ氏殺害の容疑者はまだ逮捕されていない。暗殺の脅威は一部の候補者にとっては許容できる限度を超えてしまい、エテレクトによると、全国で少なくとも18人の候補者が2021年の選挙戦から撤退しているという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:中国、社会保険料の回避が違法に 雇用と中小企

ビジネス

米国株式市場=ダウ最高値更新、FRB議長の利下げ示

ワールド

米国防総省の情報局トップ解任、理由は不明=関係筋

ワールド

トランプ氏、輸入家具に対する「大規模な」関税調査実
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子、ホッキョクグマが取った「まさかの行動」にSNS大爆笑
  • 3
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラドール2匹の深い絆
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    海上ヴィラで撮影中、スマホが夜の海に落下...女性が…
  • 9
    抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り…
  • 10
    【クイズ】格差を示す「ジニ係数」が世界で最も高い…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 9
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中