最新記事

イスラエル

イスラエル政治が大混乱...その陰で「争点ですらなくなった」パレスチナ問題

The Real Losers of Israel’s Election

2021年4月14日(水)18時17分
バーナビー・パパドプロス

2020年には、ネタニヤフ政権が西岸の一部併合について発言しだした。ただ、8月に一連の「アブラハム合意」の第1号となるアラブ首長国連邦(UAE)との国交正常化が実現すると、入植地併合の主張はトーンダウンした。イスラエルはその後、バーレーン、スーダン、モロッコとも国交を正常化している。

だが、アブラハム合意は、それまでのアラブ諸国のコンセンサス、すなわち「イスラエルがパレスチナ占領に終止符を打ち、パレスチナ国家樹立を認めない限り、国交正常化には応じない」という姿勢が揺らいでいることを露呈することになった。明らかな方向転換となったのだ。

アラブ勢の足並みの乱れは、今回のイスラエル総選挙でも垣間見られた。アラブリスト連合をはじめとするアラブ系政党は、イスラエルの市民権を持つアラブ系住民の教育や医療といった福祉増進と平等の実現を訴えていて、パレスチナ問題にはほとんど関心を示していない。

アラブリスト連合を率いるマンソール・アッバス自身は、2国家共存案の支持を表明してきたが、もはやパレスチナ国家樹立が非現実的な夢であることは、暗黙の了解となりつつある。「イスラエルのアラブ系住民は、基本的に2国家共存案を諦めている」とカプランは指摘する。

そんななか、イスラエルはヨルダン川西岸で分離壁建設を進めている。国際法では違法行為だが、アラブ諸国の足並みが乱れている今、諸外国もこの問題に首を突っ込むことに消極的になりつつある。

ネタニヤフは4月5日、自らの汚職疑惑裁判に出廷。リクードを最多議席に導いても、その政治的求心力は着々と低下していることを印象付けた。

結局のところ、今回の選挙はパレスチナ国家支持派と反対派の戦いでも、左派と右派の戦いでもなく、ネタニヤフ支持派と批判派の戦いだったのだ。その構図はしばらく変わりそうにない。

©2021 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、パキスタンとアフガンに自制求める

ワールド

再送自民がイラン情勢会議開催、エネルギー供給に懸念

ワールド

湾岸諸国の航空会社、アジア路線の優位低下へ=ルフト

ビジネス

豪中銀、連続利上げ僅差で決定 方向性の見解は全員一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 9
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中