最新記事

LGBTQ

「交際相手がゲイと知ったショックで殺してしまった」という弁護がやっと禁じられる

Virginia Is First Southern State to Ban 'Trans Panic' Defense for Murder, Assault

2021年4月7日(水)06時30分
ダニエル・ビャレアル
法廷の被告イメージ

「相手がゲイと知ってパニックになった」という弁護を禁じたのはこれで11州になった Chris Ryan-iStock.

<相手がゲイやトランスジェンダーだと知って一時的に精神錯乱状態に陥ってしまった、と殺人や暴行を正当化する弁護がバージニア州で禁じられた。南部では初めてだ>

米バージニア州は2021年3月31日(現地時間)、南部諸州で初めて、殺人や暴行事件の裁判で被告の弁護に「ゲイ・パニック」と「トランスジェンダー・パニック」を用いることを禁じる州法を成立させた。

民主党の州知事ラルフ・ノーサムが署名、成立したこの法律は、殺人や暴行事件を起こした被告が、交際相手がゲイやトランスジェンダーとわかったから、あるいはゲイやトランスジェンダーに告白されたから、カッとなって暴力を振るってしまった、あるいは殺してしまった、などと主張して減刑や無罪を主張することを禁じるもの。

同種の禁止令は、すでに10州で成立している。バージニア州の法案を起草したのは、同州議会の下院議員を務める民主党のダニカ・ロームで、トランスジェンダーであることを公表した米史上初の州議会議員だ。

トランスジェンダー関連のニュースとカルチャーサイト「プラネット・トランスジェンダー」によれば、ロームは自身のフェイスブックでこう述べている。「トランスジェンダー認知の日である本日3月31日、この法案を成立できたことに、トランスジェンダーの州議会議員として感謝している。これで、2021年からは、1998年に14歳だった私が秘密を抱えて誰にも言えず感じていた恐怖を、誰も抱かずに済むようになる」

「ゲイ・パニック」や「トランスジェンダー・パニック」についてはどの法律書にも書かれていないが、被告はしばしば、一時的な錯乱状態だったと主張するために被害者がゲイやトランスジェンダーだったのでパニックになったと言い訳をした。

「米国LGBT法曹協会」はこうした主張について、LGBTQが犠牲になったのは、彼らが攻撃を「誘発」したせいだと主張するもので、犯罪の責任をLGBTQに負わせるものだと指摘する。また、LGBTQの人々は不誠実でモラルに欠け、性的に積極的であるという古くからのステレオタイプを利用するものでもある。

ロームが本誌に宛てたメールによれば、LGBTQによる「非暴力的な性的誘惑」は、LGBTではない人たちによる同じような性的誘惑と比べて、より「挑発的」で脅迫的だとみなされているという。また、ゲイ・パニック論ではしばしば、被告が必要以上の暴力をふるったことの正当化が試みられる。

テキサス州にあるセントエドワーズ大学で刑事司法を研究するアシスタント・プロフェッサー、ウォレン・C・アンドリーセンによると、ゲイ・パニック論が用いられた殺人事件訴訟104件を調査したところ、パニック・ディフェンスで減刑されたのは32%だった。それ以外のほぼすべてのケースでは、パニック・ディフェンスを用いた被告に対し、最低限の刑罰よりも厳しい判決が下されていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ2都市にロシアが攻撃、和平協議直後

ビジネス

乳児ボツリヌス症の集団感染、バイハート社の粉ミルク

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 9
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中