最新記事

米外交

バイデン政権も「中国への強硬姿勢は正しい」と、脱中国に挑む

WALLED IN

2021年3月31日(水)19時30分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

この疑問をぶつけると、バイデン政権のNSC高官は言ったものだ。「そんなことは全て、こちらも考慮に入れている」と。

新型コロナウイルスはどこから来たかという問題も、トランプ政権の残した厄介な置き土産の1つだ。ポンペオはやはり退任間際に、あれが武漢ウイルス研究所から流出した可能性に改めて言及し、19年秋の段階で同研究所職員の数名がよく似た症状を示していたと語っている。

WHO(世界保健機関)の調査団が武漢に入ったのは今年1月14日のこと。周知のとおり、トランプはWHOの「中国びいき」に反発して脱退を通告したが、バイデンは就任直後に脱退を撤回している。アメリカが国際機関に復帰する姿勢を示す象徴的な動きの1つだった。

ところがその後、WHOは醜態をさらし、バイデン政権を困らせた。WHOの調査団は重要なデータを目にすることもできずに「調査」を終え、ウイルスが武漢研究所から流出した可能性を否定し、一方で輸入品の冷凍食品を介してウイルスが輸入された可能性も否定した。

WHOの拙速な調査と、その後の記者会見は大失敗だった。サリバンは、バイデン政権がWHOの結論を疑問視しており、感染発生の経緯に関するさらなるデータの提供を中国側に求めるとの声明を出した。これではポンペオ時代と変わらない。バイデン自身も、WHOの調査について問われた時は素っ気なく「必要なのは事実だ」と答えている。

今はこの2つの論争の陰に隠れているが、もっと深刻な問題がある。まずは中国とのデカップリング(経済関係の切り離し)をどこまで続けるかという問題だ。

トランプは在任中、経済面の中国離れを進めていた。新型コロナの流行をきっかけに、マスクのような個人用防護具を中国で製造せず、国内生産に戻すよう(3M社などの)米企業に要求した。だが多国籍企業を中国から引き離す取り組みはほとんど実を結ばず、効果もなかった。

厳しい対中姿勢を維持

連邦議会は19年に、中国製の機器やソフトウエアを調達網から排除するようアメリカの軍事・通信会社に求める法律を成立させた。しかし中国製機器の除外は政府の想定した以上に困難で、思惑どおりには進んでいない。また、中国排除はさまざまな重要産業に損失をもたらす。米コンサルティング会社ローディアム・グループの最近の調査では、中国市場を失えば、アメリカの半導体産業の年間売り上げは少なくとも540億ドルも減少すると推定されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中