最新記事

英王室

メーガン妃のまことしやかな被害者談に惑わされるな

Misleading and Manipulative

2021年3月17日(水)17時00分
ナイジェル・ファラージュ(英国改革党党首)
昨年8月に出版されたヘンリー王子とメーガン妃の伝記本

メーガン妃の発言で英タブロイド紙は大騒ぎ(写真は昨年出版された2人の伝記本) Toby Melville-REUTERS

<「真実」を装った偽りで英王室を裏切ったヘンリー王子夫妻>

世論を味方に付けるには先手必勝。相手より先に自分の主張をぶつけ、ついでに相手の印象を悪くする手も打てれば、文句なしに有利だ。

名司会者オプラ・ウィンフリーの助けもあって、メーガン妃は女優として一世一代の名演技をしてみせた。アメリカのテレビ視聴者がヘンリー王子とメーガン妃の「私たちは被害者」論をすんなり受け入れたのも無理はない。

だが王子の祖父で高齢(もう99歳)のエディンバラ公フィリップ殿下が体調不良で入院中の時期に、こんな話をするのは不謹慎だ。しかも2人の言う「真実」なるものは間違いだらけだ。

そもそもヘンリーは破格の特権を持つ身分に生まれ、幼い頃からその特権には義務も伴うことを教わってきた。だから母親の非業の死というトラウマを抱えながらも、成人すると英陸軍に入り、アフガニスタンで活躍し、軍人として立派に義務を果たしたとの評価が定着していた。

なのに今回は、兄ウィリアム王子や父チャールズ皇太子も王室という制度に「囚(とら)われていて」、絶対にメディアの監視から逃れられない運命だと言い張った。

特権ゆえの義務を背負って生まれてきた者に、逃げるという選択肢はない。ヘンリーは王族の役割を捨ててハリウッドへ逃げたが、そんな選択は父や兄には一度も許されなかったし、今もない。それくらいは知っているはずだ。

王子の称号はなくて当然

さらに、海兵隊元帥という名誉職にありながら2019年には軍の行事をすっぽかし、ロンドンで映画の試写会に出席していた。その会場で米ディズニーのロバート・アイガーCEO(当時)にメーガンを声優として売り込んでいたとも伝えられる。公務最優先で生きてきた女王陛下は落胆したに違いない。そんな利己的な孫が、今度はテレビで肉親を裏切ったのだ。もう目も当てられない。

夫に比べると、メーガン妃の演技は別格だった。おとぎ話を地でいく結婚式(18年)の熱狂が冷めた後、英メディアにいじめられてきたのは事実だが、気候変動問題について説教する一方で世界中を専用ジェット機で飛び回る夫妻の姿は単なる「偽善」を通り越している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中