最新記事

ヘルス

都市部よりも歩かない......「クルマ依存」の地方で深刻な運動不足

2021年3月3日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

都道府県別の平均歩数にはかなりの開きがある shapecharge/iStock.

<自動車の保有台数が多い地方ほど、1日あたりの平均歩数は少なくなっている>

コロナ禍で巣ごもり生活が続くなか、国民の運動不足が懸念されている。高齢者では、フレイル(身体の虚弱化)の進行も怖い。

政府は適度な運動の実施を呼び掛けているが、国民も危機感を抱いているようで、昨年に週1回以上運動・スポーツを実施した人の割合は59.9%と過去最高だったそうだ(スポーツ庁)。とくにウォーキングや体操などに取り組む人が増えている。

健康維持のためなら、無理をしてジョギングなどをする必要はない。ちょっと汗ばむ程度の速歩で事足りる。よく言われるように、歩くのも立派な運動だ。政府も国民がどれほど歩いているかに関心があるようで、厚労省の『国民健康栄養調査』では、成人男女の1日の平均歩数が算出されている。

2016年の資料によると、20〜64歳の1日の平均歩数(年齢調整値)は男性が7779歩、女性が6776歩となっている。男性のほうが外に出る機会が多いので、歩数は多いのだろう。都道府県別の統計表も出ていて、それによると東京都の男性は8611歩であるのに対し、筆者の郷里の鹿児島県は7296歩だ。これは肌感覚で分かる。地方では車を使う頻度が多いためだろう。

全都道府県を歩数で塗り分けた地図にすると、一定の傾向性が見えてくる。<図1>を見ていただきたい。

data210303-chart01.png

都道府県別に見ると、男性の1日の歩数は5647歩から8762歩までの開きがあり、歩数が多い県に色をつけると都市部が色に染まる。太平洋ベルト地帯で色が濃い。「都会は歩く」。この傾向が見受けられる。公共交通網が発達しているので、移動は電車やバスが主流だが、乗り換えや広い駅構内があり、意識はせずとも結構歩いているものだ。

対して地方はクルマ社会で、100メートルほどの距離しかないコンビニに行くにも自動車を使ってしまう。筆者は鹿児島と東京の生活を知っているので、このコントラストはよく分かる。筆者の親族は上京してくるといつも、「東京では歩かされる」と苦笑いしていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

歳出最大122.3兆円で最終調整、新規国債は29.

ワールド

トランプ政権、元欧州委員ら5人のビザ発給禁止 「検

ワールド

米連邦地裁、H─1Bビザ巡る商工会議所の訴え退ける

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡 ガス漏れか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中