最新記事

ワクチン

元医療従事者と若者、世代を超えた「ワクチン義勇軍」で接種を加速せよ

2021年1月27日(水)12時00分
ジェラルド・ボーン(アンコール・フィジシャンズのディレクター)、フィリス・シーガル(同団体のシニアフェロー)

若い世代と引退した元医療従事者の力を結集する時 BRIAN SNYDER-REUTERS

<両世代の異なる人生経験とスキルの活用は、短期間で効率的なワクチン接種を可能にするだけでなく、世代や人種間の先入観を突き崩すきっかけになるかもしれない>

ワクチンを新型コロナウイルス対策の決定打にするためには、短期間で膨大な数の人に接種を行う方法を早急に考案する必要がある。

ミット・ロムニー上院議員は、引退した医療従事者の協力を得るべきだと提案している。一方、マサチューセッツ大学のマイケル・コリンズ医学大学院学長とマーティー・ミーハン総長は、大学生と最近の卒業生で構成する「ワクチン義勇軍」の創設を呼び掛けた。

どちらも素晴らしい案だが、この2つを組み合わせればもっといい。引退した医療従事者と若者に呼び掛けて、世代を超えた奉仕団をつくり、短期間で効率的にワクチン接種を進めてはどうか。

この方法の1つの利点は、両世代の異なる人生経験とスキルを活用できることにある。元医療従事者が注射を行い、接種後の反応を見守る。若者は、接触者追跡や広報活動、ワクチンの運搬や接種事業の運営などを担えばいい。

コロナ禍の混乱のなかでも、高齢者と若者はほかの世代に比べれば時間に余裕がある人が多い。実際、この両世代は既にボランティア活動に乗り出している。若い世代はテクノロジーを活用して独居高齢者の支援に取り組み始めているし、引退した医療従事者たちも当局の呼び掛けに応じて、ボランティアとして現場に復帰している。

若者と高齢者が協力することの利点はほかにもある。研究によると、異なる世代のスキルと経験を組み合わせることにより、イノベーションが加速し、生産性が高まる可能性があるという。異世代が互いに教え合う結果、世代や人種に関する先入観を突き崩し、コミュニティーを再建できるかもしれない。

アメリカには、ボランティアの「ワクチン義勇軍」を成功に導ける土台がある。アメリカ人は昔から奉仕活動を通じて、被災者支援やホームレス支援、子供の学習支援など、コミュニティーの重要課題に取り組んできた。

若者と高齢者が一緒に活動しているケースも多い。困窮者向けの食料配布や炊き出し、住宅整備などの現場では、両世代が日々協力して活動している。自然災害の被災者支援に取り組む団体「SBP」では、さまざまな世代で構成されるチームがアメリカ国内や中米のバハマの被災地に赴き、災害に強いコミュニティーの再建を手伝っている。

コロラド州では既に、連邦政府も支援する地域奉仕活動のためのプログラム「アメリコア」の若いボランティアと、同様のプログラムに参加している高齢者のボランティアが協力して、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組んでいる。接触者追跡や現場の医療従事者の支援を行っているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中