最新記事

中国メディア

トランプの「置き土産」に反発する中国メディア

Chinese Media Attacks American 'Selfishness'

2020年12月28日(月)18時10分
デービッド・ブレナン

クリスマス休暇でフロリダの別荘に向かうトランプ米大統領夫妻(12月23日) Jonathan Ernst-REUTERS

<コロナ問題で相変わらずの中国批判を繰り返すトランプを「無能な負け犬」呼ばわりも>

コロナ禍でアメリカ国民が経済的苦境に陥った責任は中国にある──アメリカのドナルド・トランプ大統領のそんな発言に、中国の国営メディアはパンデミックの政治問題化だとそろって反発している。

トランプはこれまで一貫して、コロナ禍の責任は新型コロナウイルスが昨年11月に最初に発生が確認された中国にあると言い続けてきた。中国は国内では都市封鎖などの厳格な措置により早期にコロナの封じ込めに成功したが、国際的な流行拡大を止めるための手立ては何ら講じなかった。

トランプはこれまで、コロナ問題への対応について遅れや混乱が目立つとして幅広い層からの批判を浴びてきた。また自身がコロナに感染して入院した後も、パンデミックの規模や深刻さを軽く捉えているような発言を繰り返している。

米連邦議会は12月21日、新型コロナウイルス感染拡大に対応する追加の経済対策を長い議論の末に可決した。この経済対策には1人あたり600ドルの現金給付も含まれているが、トランプは給付額を2000ドルに引き上げるよう要求して1週間ほど署名を拒否した(27日夜に一転、署名)。

そんな中でもトランプは、コロナ禍の責任を中国に転嫁し、世間の批判の目を中国に向けようとしていた。

「アメリカ国民に金をよこせ!」とトランプ

26日にトランプは「なぜ政治家たちは国民に、たった600ドルではなく2000ドルを配ろうとしないのか。(だが)悪いのは政治家たちではない、中国だ。アメリカ国民に金をよこせ!」とツイートした。

中国の当局者や国営メディアはこうしたトランプからの非難を、トランプ政権の失敗から世間の目をそらそうという人種差別的な試みだとしてはねつけてきた。政府系の日刊英字紙チャイナ・デイリーの陳衛華(チェン・ウェイホア)欧州支局長は26日のトランプのツイートに「全く無能な負け犬(の遠吠え)」とコメントを付けた。

他の政府系の新聞の社説を見ても、中国国内における感染封じ込めをたたえるとともに、トランプやアメリカの同盟国を批判する内容が目立つ。

中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙で、民族主義的なことで知られる環球時報は社説で、パンデミックとの戦いは「この冬、最も重大なグローバルな問題だ」と説いた。

そしてワクチンに関し、先進諸国はアメリカからの供給を当てにはできないとして、中国が自前のワクチンを開発し流通させることが必要だと強調した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン主要濃縮施設の遠心分離機、「深刻な損傷」の公

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中