最新記事

宇宙

太陽系外惑星からの電波放射をはじめて検知した!?

2020年12月18日(金)18時10分
松岡由希子

うしかい座から発せられたとみられる電波バーストが検知された...... credit:Jack Madden / Cornell University

<米コーネル大学、仏PSL大学らの研究チームは、地球で初めて太陽系外惑星からの電波放射である可能性がある電波バーストを検知した...... >

電波望遠鏡を用いた宇宙観測により、うしかい座から発せられたとみられる電波バーストが検知された。これは地球で初めて検知された太陽系外惑星からの電波放射である可能性がある。

米コーネル大学、仏PSL大学らの研究チームは、オランダの電波望遠鏡「LOFAR」を用い、ホットジュピター(恒星に近い軌道を公転する高温で大質量の太陽系外惑星)を擁する星系から電波バーストを発見。その候補となる太陽系外惑星として、かに座55番星、アンドロメダ座ウプシロン星、うしかい座タウ星を約100時間にわたり観察した。

その結果、太陽系から約51光年の距離にあるうしかい座タウ星から14〜21メガヘルツの範囲で電波バーストが確認された。一連の研究成果は2020年12月16日、学術雑誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジックス」で発表されている。

木星を太陽系外惑星に見立て、電波放射を観測

研究チームでは、2019年1月29日に発表した研究成果において、太陽系外惑星の電波放射を分析するためのデータパイプライン「BOREALIS」を開発。この仕組みを検証するべく、木星を太陽系外惑星に見立て、「LOFAR」を用いてその電波放射を観測し、「木星が太陽系外惑星であったとしたら、木星の電波放射はどのようになるのか」を「BOREALIS」で計算した。

今回のかに座55番星、アンドロメダ座ウプシロン星、うしかい座タウ星の観察でも「BOREALIS」が用いられている。研究論文の筆頭著者でカーネル大学のジェイク・ターナー博士研究員は「木星での研究から太陽系外惑星の電波放射がどのようなものかを学んだうえで、実際にそれを探し、見つけることができた」と今回の研究の成果を強調している。

ただし、検知された電波信号は弱く、うしかい座タウ星から放射されたものかどうかについて不確実性は依然として残っている。研究チームでは、複数の電波望遠鏡を用いて、うしかい座タウ星の電波信号の追跡観測をすすめている。

太陽系外惑星の居住適性などの解明にも役立つ

太陽系外惑星からの電波放射の観察は、太陽系外惑星の磁場を検出するための有望な手段であるとともに、太陽系外惑星の内部構造や大気散逸、居住適性などの解明にも役立つ。

研究論文の共同著者でもあるコーネル大学のレイ・ジャヤワルダネ教授は「追跡観測で確認されれば、この電波放射の検知は太陽系外惑星への新たな扉を開き、太陽系から何十光年も離れた異星人の世界を調べる新たな手段を我々に与えるものとなるだろう」と期待を寄せている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

トランプ氏、ウクライナ兵器提供表明 50日以内の和

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中