最新記事

感染症対策

コロナワクチン実用化で課題 企業は従業員に接種「強制」できる?

2020年12月4日(金)10時53分

専門家によると、米民間企業は法律の下、従業員に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける権利が認められている。ただ、訴訟リスクや社会的な反発の可能性を踏まえ、義務付けに踏み切る可能性は低いという。写真はボスニア・ヘルツェゴビナのゼニツァで10月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

専門家によると、米民間企業は法律の下、従業員に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける権利が認められている。ただ、訴訟リスクや社会的な反発の可能性を踏まえ、義務付けに踏み切る可能性は低いという。

企業は新型コロナワクチンへのアクセスを模索し始めたばかりだが、人が密集する倉庫や工場、店舗の売り場などでは、ワクチン接種が安全な事業運営再開の鍵になるとみられている。

国際医療法を専門とするジョージタウン大学のローレンス・ゴスティン教授は「企業は全従業員にワクチンを接種させる正当な理由とともに、全ての従業員と顧客の安全を守る義務がある」と指摘する。


同教授や他の5人の医療法専門家によると、米民間企業には健康や安全面の基準を設定する幅広い権限があり、雇用の条件として、一定の例外の下でワクチン接種を義務付けることが可能という。

米雇用機会均等委員会(EEOC)は5月、雇用主が職場復帰前の従業員に新型コロナ検査を義務付けるのを認めており、一部の専門家はワクチンについても同様の判断が適用される可能性があるとみている。

ただ、ドレクセル大学のロバート・フィールド法学・公衆衛生学教授は、新型コロナワクチンの接種義務化を検討している企業は規制当局の正式承認を待つべきだと指摘。緊急使用許可(EUA)の段階でワクチン接種が義務付けられた前例はないため、根拠が弱いとした。

雇用主によるインフルエンザ予防接種義務付けに反対して医療従事者が起こした過去の裁判ではおおむね、適切な例外措置が設けられている限り病院側の主張が認められてきた。

米政府機関はこれまでのところ、新型コロナワクチンの接種義務付けについて見解を示していないが、米労働安全衛生局(OSHA)は過去に、雇用主にはワクチン接種を義務付ける権利があるとの立場を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中