最新記事

感染症対策

WHO「レムデシビル、コロナ入院患者への使用推奨せず」 事前認証除外

2020年11月21日(土)11時07分

世界保健機関(WHO)は米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル」について、症状の重さにかかわらず、新型コロナウイルス感染症の入院患者による使用は推奨しないとの指針を出した。写真は4月8日、ドイツのハンブルグにあるエッペンドルフ大学病院の会見で撮影(2020年 ロイター/代表撮影)

世界保健機関(WHO)は20日、米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル」について、症状の重さにかかわらず、新型コロナウイルス感染症の入院患者による使用は推奨しないとの指針を出した。致死率や酸素吸入の必要性で改善につながるとの証拠がないためとし、事前認証(PQ)リストから除外した。

指針は「患者にとって重要な致死率低下や人工呼吸器の必要性、臨床的な改善まで要する時間などについて、レムデシビルの投与で結果が改善したという証拠がない」とした。

WHO当局者はその後、ロイター宛の電子メールで、各国がWHOの指針に従うよう、レムデシビルをPQリストから除外したと明らかにした。


レムデシビルは初期の治験で有望な結果が示されたため、コロナ感染症の有効な治療薬になる可能性があるとして今夏に世界的に注目を浴びた。しかし、WHOの指針によって優位性が低下するとみられる。

ギリアドは10月末にレムデシビルの売り上げを予想するのは困難だとし、通年の売上高見通しを引き下げた。

同薬はコロナ患者を治療するために世界で承認されている2つの治療薬の1つ。ただ、WHOは10月、自らが主導した大規模治験でレムデシビルがコロナ感染症の治療で入院期間や死亡率にほとんど影響を与えないことが分かったと報告していた。

レムデシビルは、トランプ米大統領が最近新型コロナに感染した際にも投与されていた。

ギリアドはWHOの治験結果に疑問を呈している。

WHOのガイドライン策定グループ(GDG)は今回の指針はコロナ入院患者7000人以上が被験者となった4つの国際的な無作為試験のデータなどの検証に基づいていると説明した。

集中治療医を代表する欧州集中治療医学会(ESICM)のジョゼフ・ケセシオグル会長も13日、レムデシビルはコロナ感染の重症患者に対する日常的な治療として使用されるべきではないと述べている。

*情報を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け不安定な展開

ワールド

英、パレスチナ国家承認へ トランプ氏の訪英後の今週

ビジネス

NY外為市場=ドル下落後切り返す、FOMC受け荒い

ビジネス

FRB0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用にらみ年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中