最新記事

ワクチン

新型コロナワクチン、モデルナ製とファイザー製をどう使い分ける?

Moderna’s COVID Vaccine Has a “ Huge Advantage”Over Pfizer’s

2020年11月19日(木)16時30分
カシュミラ・ガンダー

モデルナのワクチンは業務用冷凍庫でも保管可能(写真はイメージ) Dado Ruvic-REUTERS

<ファイザー製は扱いが極度に難しいので都市限定になるかも>

バイオ企業モデルナが開発している新型コロナウイルスのワクチンは、製薬大手ファイザーのワクチンと比べて保管、輸送、接種が簡単なため、アメリカで認可され、配布が始まった場合「はるかに有利」になると、専門家はみている。

ファイザーは11月9日、ドイツの製薬企業ビオンテックと共同で開発中のワクチンについて、大規模な臨床試験で90%発症を防ぐ効果が認められたと、中間分析の結果を発表した。1週間後の16日、モデルナは自社のワクチンの治験で94.5%の有効性が確認されたと発表。さらに18日、ファイザーは最終分析の結果、95%の有効性が認められたと発表した。

いずれも報道機関向けの発表にすぎず、正式な論文が同分野の専門家の査読を経て学術誌に受理されたわけではない。そのため専門家はこれでコロナ禍が収束すると喜ぶのは時期尚早だと釘を刺している。ファイザーは既にデータは出そろったとして、早急に米食品医薬品局(FDA)に認可申請を行う予定だ。アレックス・アザー米厚生長官はファイザーとモデルナのワクチンをスピード認可し、年内にも国内で配布を開始する考えを示している。

感染封じ込めへの期待が高まる一方、ワクチンの流通については大きな問題が残されている。ファイザーのワクチンはマイナス70度の「超低温」、モデルナのワクチンもマイナス20度で保管しなければならない。いずれも温度変化に弱く、劣化しやすいmRNAという遺伝物質が入っているためだ。冷蔵庫で最長1年間保存可能なインフルエンザワクチンと違って、輸送にも保管にも厳密な温度管理が求められるのだ。

クリニックでの保管は無理

それでも、モデルナのワクチンはファイザーのワクチンに比べれば、はるかに取り扱いやすいと、サウスカロライナ大学のプラカシュ・ナガルカッティ教授(専門は免疫学)は本誌に語った。

ファイザー製ワクチンの品質維持に求められる条件は「極端に厳しい」と、テネシー大学のトーマス・ゴールズビー教授(専門は物流管理学)も言う。「モデルナのワクチンは、いざとなったらアイスクリームや冷凍食品用の業務用冷凍庫でも保管できるが、ファイザー製はそうは行かない」

ファイザーは超低温でワクチンを運べるスーツケース大のコンテナを開発したが、コンテナには大量のドライアイスを入れなければならない。ゴールズビーによると、ドライアイスは世界的に供給不足が続いていて入手困難だ。

また、ガラス容器に入れたワクチンをコンテナに詰めるなら、「ガラスが超低温に耐え得るかどうかも問題になる」と、ナガルカッティは言う。

こうした問題をクリアして、ファイザー製ワクチンを特製コンテナに詰めて輸送できたところで、超低温の冷凍庫は非常に高価で、大病病院でも購入は難しい。地方の小さな町のクリニックなどで接種するとなれば、ワクチンの安定性を保つのはほぼ不可能だと、ナガルカッティはみる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中