最新記事

米外交

中国とロシアがバイデンを祝いたくない理由

Why China Waited So Long to Congratulate Biden―And Russia Still Hasn't

2020年11月16日(月)19時10分
ジョン・デニ(米陸軍大学校戦略研究所研究教授)

中国は11月13日になってようやく、外務省の汪文斌報道官がバイデンに祝意を示したが Tingshu Wang-REUTERS

<多国間主義で同盟国と手を組んで対抗してくるバイデン新政権は、強硬だが孤立していたトランプより手ごわいライバルとなる>

米大統領選で勝利した民主党のジョー・バイデンに対し、中国政府はなかなか祝意を表明しなかった。ロシア政府などはいまだに祝意を示していない。だが驚くにはあたらない。両国とも理由は説明していないが、地政学上の懸念に由来する「希望的観測」が背景にはあるとみられる。

トランプ政権は、超大国間の競争を国家戦略の正式な軸とした。だがバイデン政権は多国間主義を採り、同盟諸国を軽視したり弱体化させるのではなく、強化させる競争戦略を推進するだろう。リベラルな国際秩序を弱体化させようとする中露の動きを押し戻し、大国間競争の行き過ぎを巻き戻す狙いだ。

トランプ政権の2017年国家安全保障戦略は、歴代政権のアプローチとははっきりと異なるものだったが、一方で、党派を問わず安全保障畑の人々の間で生まれつつあった「共通認識」を反映したものでもあった。対テロ戦争後の世界では、何より中露の強権主義に対抗しなければならない、という認識だ。

ちぐはぐだったトランプ外交

問題は、トランプ政権がそれを実行に移したやり方にあった。

トランプ政権の対ロシア関係は、控えめに言っても複雑で首尾一貫しないものだった。アメリカの対露政策がちぐはぐであることは、政権発足後すぐに明らかになった。アメリカの政府機関がほぼ足並みを揃えて大国間の競争政策を推進する一方で、ホワイトハウスはそれとは大きく違うことを言ったりやったりした。

ヨーロッパの同盟諸国に対しても、トランプ政権はちぐはぐなアプローチを採った。NATOには「計り知れないメリット」があると言う一方で、NATOからの脱退やをちらつかせて脅したりした。

また中国について言えば、トランプは習近平を持ち上げたりしつつも、中国政府主導の略奪的輸出促進策に対しては制裁関税などの手段を用いて過去に例がないほど厳しく抑え込んできた。

だがその一方で、トランプはインド太平洋地域の同盟諸国と団結して中国に対抗すのではなく、中国に課したのと同じ制裁関税を同盟諸国にも課した。韓国に対しては、在韓米軍の駐留経費の負担額を約5倍に増やさなければ米軍を撤退させると脅したし、中国が標的のTPP(環太平洋経済連携協定)からは脱退した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米1月CPI、前年比2.4%上昇 伸び鈍化し予想も

ワールド

米・ロ・ウクライナ、17日にスイスで和平協議

ワールド

米中外相、ミュンヘンで会談 トランプ氏の訪中控え

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中