最新記事

米大統領選2020 アメリカの一番長い日

中国が本心ではトランプ再選を望む理由

BEIJING VIEWS U.S. IN TERMINAL DECLINE

2020年11月13日(金)15時30分
ラッシュ・ドシ(ブルッキングス研究所中国戦略イニシアチブディレクター)

2017年11月、就任後初の訪中でトランプは盛大なもてなしを受けた。メラニア夫人、習近平夫妻と共に人民大会堂での夕食会に向かう THOMAS PETER-REUTERS

<アジアのみならず世界の覇権を目指す中国にとって、アメリカの衰退を加速させる「破壊王」はむしろ好都合。本誌「米大統領選2020 アメリカの一番長い日」特集より>

米国家情報長官室は今年8月、中国が「ドナルド・トランプ大統領の再選を望んでいない」という公式見解を発表した。
20201117issue_cover200.jpg
確かに中国の指導者は、トランプの最近の攻撃性から一時避難したいと思っているかもしれない。しかし一方で、トランプがアメリカの力を弱め、その衰退を加速させているとも考えている。より重要なのは後者の見立てで、中国政府はアジアのみならず世界でも、米政府に挑戦する姿勢を強めている。

中国の指導者は常に、アメリカの力を検証し、評価し直してきた。冷戦の終結以降、中国の基本戦略として「多極性」「国際的な勢力均衡」などの概念が語られてきたが、これらは米中の相対的なパワーバランスを示す婉曲表現でもある。アメリカの力に対する中国の認識が変われば、基本的に中国の戦略も変わる。

過去30年に2回、こうした戦略の転換が起きている。1回目は天安門事件の後。ソビエト連邦の崩壊により、中国は冷戦下で擬似同盟関係にあったアメリカを、強力でイデオロギー上の脅威になる敵国と見なすようになった。これに応じて鄧小平や江沢民(チアン・ツォーミン)らは、「韜光養晦(才能を隠して、内に力を蓄える)」を掲げた。

この戦略転換の狙いは、地域におけるアメリカの影響力をひそかに鈍らせることだった。非対称的な軍事力を駆使して、より強大な軍事力を阻止する。通商協定を締結して、経済的な強制力を抑制する。地域機関に参加して、アメリカ主導のルール設定と同盟構築を阻止する、というわけだ。

2回目の戦略転換は、その20年後に始まった。中国は、2008年の世界金融危機でアメリカが弱体化したと確信。胡錦濤(フー・チンタオ)は鄧時代の戦略を修正し、「積極的に何かを成し遂げる」ことを強調するようになった。

その狙いは、地域秩序の構築だった。中国は地域に介入するための戦力投射能力(国外に軍隊を派遣、展開する能力)を公然と追求しつつ、一帯一路構想と経済外交を通じて他国に影響力を及ぼし、国際機関を構築して地域のルールを定めた。

そして今、3回目の戦略転換が進んでいる。始まりは4年前。イギリスの国民投票でEU離脱が支持され、トランプが米大統領に選ばれた年だ。

世界でもとりわけ強力な民主主義国家が、自ら構築に貢献した国際秩序から離脱していくことに、中国政府は衝撃を受けた。ただ、国家主義の復活を後押しして中国の再生を促進するという意味で「トランプ政権とブレグジットは素晴らしいパフォーマンスを披露」したと、中国共産党中央党校の陳積敏(チェン・チーミン)はみる。

「100年に1度の大変化」

その後程なく、アメリカの力について中国共産党が好んで使う婉曲表現は、トランプ時代がアメリカの相対的な衰退に寄与するだけでなく、衰退を加速させているという見方を物語るようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 原油高受けたインフレ圧力

ワールド

トランプ氏訪中、中国が延期で合意 早期に再調整=ホ

ワールド

NATO、ホルムズ海峡再開を協議 ルッテ事務総長「

ワールド

IAEA、イラン中部の新ウラン濃縮施設の状況把握せ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ
  • 4
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中