最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、軍事パレードを異例の未明に実施 大型最新ICBMを公開

2020年10月11日(日)13時00分

北朝鮮は10日に実施した未明の軍事パレードで、初めて公開する大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を披露した。(YTN News / YouTube

北朝鮮は10日に実施した未明の軍事パレードで、初めて公開する大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を披露した。北朝鮮がこの時間帯に軍事パレードを行うのは異例。

北朝鮮国営ニュースの朝鮮中央通信が10日夜、映像を公開した。

ミサイルは11の車軸を有する運搬車が運んでおり、専門家によると、運用可能になれば陸上発射型のICBMとしては世界最大級の1つとなる。

「このミサイルは怪物だ」と、平和団体オープン・ニュークリア・ネットワークのメリッサ・ハンナム副所長は言う。

パレードではこのほか、北にとって最長射程となる火星15号、さらに潜水艦発射型ミサイル(SLBM)とみられる装備も披露した。

米政府高官は、ICBMが登場したことに「失望」の意を示し、朝鮮半島の完全な非核化を実現するよう、米政府に交渉するよう呼びかけた。

北朝鮮が弾道ミサイルを公開するのは、金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が2018年6月ににシンガポールで会談して以来初めて。金委員長は「わが国の抑止力と自衛力を強化し続けていく」と語った。一方で、軍事力を先制使用することはないとした。

金氏は経済発展の約束を果たせていない理由として、国際社会による制裁措置、台風、新型コロナウイルスを挙げた。その上で「多くの信頼に応えることができていないのは遺憾だ」とした。「私の努力と献身は、苦しい状況から国民が抜け出すのに十分ではなかった」と述べた。

映像は、深夜に金委員長が姿をみせる様子を伝えた。金氏はグレーのスーツとネクタイ姿。平壌の金日成広場で軍関係者に囲まれながら群衆に手を振り、子供たちから花束を受け取った。

パレードは高度に演出されたもので、数千人規模の軍隊が隊列を組んで行進し、新型の戦車などを披露、戦闘機が照明弾を放った。

専門家は新たに公開されたICBMについて、多弾頭を搭載できる可能性を指摘する。複数の標的を同時に狙えるようになり、迎撃する側にとっては難しさが増す。

米政府で北朝鮮の情報収集をしていたマーカス・ガーラウスカス氏は、新型ミサイルは北の弾頭が米国本土に届くかどうかという疑念を払しょくするために披露された可能性があると指摘。このミサイルを試射する用意があることを示唆したとの見方を示した。

「もし火星15号が『超巨大な弾頭』を運搬できるとしたら、さらに大きなこのミサイルは何を搭載可能なのかという疑問に当然ながら行き着く」と、ガーラウスカス氏は語る。

金委員長は、自然災害と新型コロナに対応する軍に感謝しながら、感情的になる場面があった。金氏は、北朝鮮国内で1人も新型コロナの陽性者が出ていないことに謝辞を表明した。米国も韓国も、誰も感染していないとする北の主張を疑問視している。

この軍事パレードではマスク姿の聴衆は確認されていない。

金氏は、パンデミック(感染症の世界的流行)が終息した暁には韓国と再び手を取り合うことに期待を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



北朝鮮は労働党創建75周年記念閲兵式で、火星15号よりさらに大型の新型ICBMを公開した。北朝鮮がこの新型ICBMを実際に試験発射したのか、するならいつするか、また何を搭載するのかに関心が注がれている。 YTN News / YouTube

ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳、15日にアラスカで会談 ウクライナ戦争終

ビジネス

トランプ大統領、内国歳入庁長官を解任 代行はベセン

ビジネス

アングル:米関税50%の衝撃、インド衣料業界が迫ら

ワールド

プーチン氏、中印首脳らと相次ぎ電話会談 米特使との
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何か?...「うつ病」との関係から予防策まで
  • 3
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トップ5に入っている国はどこ?
  • 4
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    今を時めく「韓国エンタメ」、その未来は実は暗い...…
  • 9
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 10
    パリの「永遠の炎」を使って「煙草に火をつけた」モ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中