最新記事

中国

父・習仲勲の執念 深セン経済特区40周年記念に習近平出席

2020年10月17日(土)20時13分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2019年10月24日の中共中央政治局学習会議で、習近平は「ブロックチェーンを核心的技術の自主的なイノベーションの突破口と位置づけて、ブロックチェーン技術と産業イノベーション発展の推進を加速させよ」と述べた。

その後、法定デジタル人民元は深センなど4つの都市で試行的使用が試みられ、今年10月12日には深センで市民が参加する法定デジタル人民元の大規模な実証試験を始めた。総額1000万元(約1億6000万円)の法定デジタル通貨を抽選で5万人の市民に「紅い封筒」を通してネットで配布するという具体的な試みだ。

中国の現行の人民元に対するデジタル支払い(キャッシュレス)は世界トップクラスで、2018年の支払い金額が39兆ドル(約4290兆円)であるのに対し、アメリカは1800ドル(約19.8兆円)でしかない。中国の0.46%だ。

中国の最終的な狙いは、現行の人民元では絶対に現在のドル基軸には勝てないので、法定デジタル人民元を用いて「米ドル覇権」を崩そうということにある。

それをグレーターベイエリア、特に深センを中心に展開していこうという狙いが、この深セン訪問に込められている。

リスキーな「一帯一路」沿線国を逆利用し、法定デジタル人民元の普及を狙う

中国国内で使われたとしても、それが国際社会で流通しなければ国際通貨としての価値は生まれない。特に通貨が流通するには、「その国家への信用度」が何よりも不可欠だ。

人権問題や香港国安法問題などで、民主的だった習仲勲とは全く逆の方向に動き、国際的信用を失っている習近平政権に、そのようなことができるはずがないと誰でもが反射的に思うだろう。

しかしコロナで人が現金を使わなくなっただけでなく、中国は一帯一路沿線国の内の発展途上国に対して、コロナ流行のために負債返還の減免を今年6月7日に宣言した。マスク外交で一帯一路を「健康シルクロード」と名付けている。これがやがて「法定デジタル人民元シルクロード」となるべく、習近平は虎視眈々と狙っているのだ。

隠された骨格にあるのは、実は中国が債権を持っている大多数の国は「信用格付け」(金融商品または企業・政府などの信用状態に関する評価を簡単な記号または数値で表した等級)すらされてない国がほとんどだということだ。どの国もあまりにリスキーなために、これらの国にお金を貸さない、その危険性を押して中国はお金を貸している。

つまり信用格付けさえ成されてないような国では、自国の銀行への信用どころか、自国の貨幣をさえ信用してない。したがってそのような国の国民は、今でも既に経済的強国である中国の人民元をキャッシュレスで使い、その方が安心だと思っているのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBの二大責務、双方に圧力=ジェファーソン副議長

ビジネス

一段の利下げに慎重、物価に上振れリスク=米ダラス連

ワールド

米政権、シカゴ向け資金21億ドル保留 政府閉鎖で民

ワールド

インド中銀総裁、経済の安定運営に自信 米関税や財政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中