最新記事

日本政治

菅政権、携帯料金・デジタル化・縦割行政など「聖域なき改革」でカギ握る調整力 問われる剛腕の振るい方

2020年9月18日(金)18時15分

9月18日、菅義偉首相は各府省の副大臣・政務官人事を固め、規制改革を柱とする政権運営が本格的に動き出した。官邸で16日撮影(2020年 ロイター/Carl Court/Pool via REUTERS)

菅義偉首相は18日、各府省の副大臣・政務官人事を固め、規制改革を柱とする政権運営が本格的に動き出した。菅氏周辺の政策ブレーンからは「聖域なき構造改革」を掲げた小泉純一郎元首相に近いとの見方もあるが、今後本格的に取り組む行政デジタル化や省庁縦割り排除には既得権益側の抵抗や副作用も予想される。これまでの辣腕ぶりには批判もある中で、調整力と突破力をいかに示すか、腕の振るい方が問われることになる。

タイプは小泉型、圧倒的情報量で官僚凌駕

「行政の縦割りや既得権益、あしき前例主義を打ち破って規制改革を全力で進める」。菅首相は16日の記者会見でこう強調した。

コロナ感染拡大に伴う給付金支払いでは、手続きの煩雑さから行政の対応が批判を浴び、デジタル対応の遅れも浮き彫りとなった。所管が分かれる縦割り行政の弊害でPCR検査数も思うように増えなかったことへの不満も、発言の背景にあるとみられる。

自民総裁選期間中には携帯電話料金の引き下げにも言及した。NTTドコモ<9437.T>やKDDI(au)<9433.T>、ソフトバンク<9434.T>の大手3社の営業利益率が20%と高水準であることを疑問視し、値下げに応じなければ各社が国に支払う電波利用料を引き上げると述べ、波紋を呼んだ。

菅氏は、これまでも周辺の反対を押し切って政策を進めてきた経緯があり、近い関係にあるとされる政策ブレーンの間では「『安倍政権の継承』とうたう菅氏自身はタイプとしては小泉(純一郎元首相)や、遡れば田中角栄(元首相)の方が近い」との見方が出ている。

もっとも省庁や官僚の反対の調整能力が菅氏が長けている理由について、かつで菅氏の秘書官を務めた官僚は他の政治家との「情報量の違い」を語る。

「これまで当たり前だったことも、国民目線からみれば当たり前でない」と言えるのは、官僚が挙げた情報以外のことを実に豊富に蓄えているからだという。「幅広い人材ネットワークでの情報交換や議論をもとに実によく勉強しており、そうした情報をもとにやりたい政策に賛同してくれる官僚や政治家を仲間に巻き込み、彼らを使ってことを前に進めるやり方だ」と説明する。

「世間で言われるような、人事の力で官僚を操るやり方ではない」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中ロ首相が会談、エネルギー・農業分野で協力深化の用

ワールド

台湾、軍民両用技術の輸出規制をさらに強化へ

ビジネス

フォード、アマゾンで中古車販売開始 現代自に続き2

ワールド

トランプ氏、メキシコ・コロンビアへの麻薬対策強化支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中