最新記事

コロナと脱グローバル化 11の予測

コロナでグローバル化は衰退しないが、より困難な時代に突入する(細谷雄一)

2020年8月25日(火)11時40分
細谷雄一(慶應義塾大学教授、国際政治学者)

世界史においてグローバリズムが強まる時代と、ナショナリズムが強まる時代があるとすれば、それは振り子のように推移していくはずだ。冷戦終結直後にはグローバル化への期待が見られ、他方で現在はむしろそれへの政治的反発が強まり、多くの国でナショナリズムが復権している。実態としてのグローバル化が進むということと、人びとの意識を支配するイデオロギーとしてのグローバリズムが普及することは同じではない。

これからコロナ禍の影響が各国経済を深刻にむしばむことで、困難が増幅されたときに憎しみの感情が膨らみ、グローバリズムというイデオロギーに対して敵対的となる可能性がある。自らの職を奪い、自国の文化を破壊するものとして、それへと反発する感情が増幅されるであろう。だとすれば、国際協調はよりいっそう困難となる。

われわれは、実態としてのグローバル化が多くの領域で進展するなかで、反グローバリズムの感情により政治がますます動かされるという矛盾した困難な時代に突入することになるのだ。

<2020年9月1日号「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集より>

【話題の記事】
新型コロナで激変する世界の航空業界、その未来は中国が決める
限界超えた米中「新冷戦」、コロナ後の和解は考えられない

20200901issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中