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コロナが迫るサステナブルへの転換「2020年は大変革の始まった年として記憶されるだろう」

RESPONSIBILITY OR RUIN

2020年8月7日(金)13時10分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)

気候変動に警鐘を鳴らすデモ(オランダのロッテルダム) ROMY ARROYO FERNANDEZ-NURPHOTO/GETTY IMAGES

<人類の行動が地球のほぼ全ての種の未来を決定づける段階に入っているが、社会と経済を急停止させた新型コロナはサステナブルな方向に舵を切る契機にもなり得る>

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まってずいぶんたつが、世界経済への衝撃が消え去る気配はない。テクノロジーが支配する現代社会において、平時でこれほどの経験は前例がなかった。

感染拡大の第2波が発生し、さらに第3、第4......と続くのか。世界中の指導者がこの恐ろしい問いに頭を悩ませているが、答えは誰にも分からない。グローバルなサプライチェーンによって結び付く世界経済が、微細なウイルスに屈服するなどというシナリオは想定されていなかった。

社会と経済が急停止した意味を短期的な視点だけで読み解いてはいけない。感染拡大で数十億人が困窮する今、政治と経済の力は急速に変化しているようだ。

未来の歴史家は2020年を大変革期が始まった年として記憶するだろう。今年は私たちが経済システムを構築してきた方法や自然との関わり方がもたらす影響への認識が深まり、ようやくサステナブルな方向に本気で舵を切る年になるかもしない。

そうなれば、新型コロナは時宜を得た警鐘だったと言える。だが必要な変化を起こせなければ、このパンデミックは人類にとって未曽有の大惨事の始まりを意味する。

1つだけ確かなことがある。人類は進歩を続けるものだという単純な思い込みが、このコロナ危機でようやく正されるということだ。これまで私たちは、絶え間のない経済成長から不測の悪影響が生じても、経済成長の成果によって相殺されるか最小限に抑制できると考えていた。厳然たる事実や科学者の警告を無視し、人間が自然を支配していると思い込んでしまった。

コロナ危機の第1の教訓は、人類の文明がより深い意味での責任に直ちに目覚める必要があると明らかにしたことだ。私たちの大半は、既にそこに気付いている。その気付きを行動に移せるだろうか。

今77億人の世界人口は、2050年には97億人に増えると予測される。物的資源への飽くなき需要は今後も高まり、地球の搾取を続ければ、自然の持つ再生能力の限界を超え続ける。この現実から、地質学的に「人新世」と呼ばれる時代が到来した。良くも悪くも人類の行動が、地球のほぼ全ての種の未来を決定づける段階に来ている。

これほど巨大な影響力には巨大な責任が伴う。技術の飛躍的な進化が招いた人口増加と大量消費により、無尽蔵に思えた天然資源は急減した。さまざまな生産活動で排出される二酸化炭素によって、驚くほどの速さで気温が上昇している。

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