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感染第2波

韓国、コロナ第2波で重症患者の病床ひっ迫 集会制限は反文在寅デモ封じ込めが目的?

2020年8月24日(月)21時46分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

パッピンスのシェアで6人に感染広まる

一方で、この禁止令には一般飲食店、ショッピングモール、カフェなどは含まれていない。結婚式を禁止するのにも関わらず、同じく50人以上が来店するとみられる大型の店舗での運営は許可されている矛盾に納得のいかない人も多い。

特にカフェの場合、ここ数日クラスターが発生している。ソウル市からほど近いパジュ市のスターバックスでは、23日午後の発表時点で累計64名の感染者が発生し、現在も数人の検査結果待ちだという。

さらに、「同じ釜の飯を食べる」という文字通りの文化がある韓国では、大皿や鍋から皆でシェアして食べることが多いが、これがクラスター発生の原因となってしまった。18日、京畿道にあるカフェA TWOSOME PLACEでは、日本の若者にも人気がある韓国式かき氷パッピンスをシェアして食べたことが原因で、7人で来店したグループの全員が感染したという。調査後、7人のうち20代のAさんが感染源だということが分かっており、改めてコロナの感染力の高さを実感する事件だ。

感染対策を口実にデモを禁止?

今回新しく出された集会禁止令は屋内ばかりではない。ソウル市は8月30日まで屋外での10人以上の集会を禁止した。これに対し一部ネチズンらの中では、感染拡大を防ぐよりも、文在寅政権への不満が高まるなか、反政府デモを行えないようにしているのではないかという意見もある。

たしかに、8月に入り文在寅大統領の支持率は低下し続けていた。今月3週目には少し上向きになったものの、洪水被害やコロナ第2波などでフラストレーションの溜った韓国人が、政府に不満をぶつけたくなる気持ちもわからないでもない。日本でも報道されているのでご存じの方も多いと思うが、韓国人のデモ集会のパワーは強烈である。政府が集団となった市民の訴える力を恐れている可能性は十分にあるだろう。

さらに、禁止令はこのような事にまで影響が出ている。今週26日に予定されていた「元ソウル市長 故パク・ヨンスン氏の四十九日法要」が急遽オンラインで行うよう変更された。この発表に対し、一部の市民たちは「今結婚式も中止している状況で、オンラインであれ行事が公式に行われること自体信じられない」「お葬式すらあげられない人がいるのに、四十九日だなんて。家族だけでやってくれ」と不快感を示している。これだけ元ソウル市長に対し拒否反応が現れた背景には、その自殺の理由が、元秘書へのセクハラを訴えられたからとみられているためだ。

韓国はこれまで、徹底した検査と追跡、そして世界の人々をあっと言わせたアイデアで新型コロナの感染の見事な抑え込みを成功させてきた。熟考を重ねに重ねて実現するよりは、とりあえずいい案があれば採用しやってみるという韓国人特有のスピーディーさも成功の秘訣なのではないだろうか。今回の数々の禁止令も、驚くべきスピードで決定しすぐさま発令されている。今回の第2波も、きっと前回の第1波のときのように見事に立ち回って、これ以上の感染拡大を押さえてくれることを期待している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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