最新記事

抗議デモ

秘密警察や記章もない車両が市民をさらう──ここはトランプの独裁国家

America's 'Not a Dictatorship': Oregon Gov. Rebukes Trump on Portland Feds

2020年7月22日(水)16時35分
ジョスリン・グレッシュチャック

ポートランド市でのデモ参加者と対峙する連邦の職員たち Caitlin Ochs‐REUTERS

<トランプがポートランドに送りこんだ正体不明の連邦職員によるデモ鎮圧に、地元当局もデモ隊も激怒>

オレゴン州知事は、同州最大の都市ポートランドに連邦職員を送り込んでデモ参加者を逮捕させているとドナルド・トランプ大統領を批判。アメリカは「独裁国家ではない」と呼びかけた。

「この国は民主主義であり、独裁主義ではない」と、ケイト・ブラウン知事は7月20日夜のツイートで訴えた。「秘密警察が記章もない正体不明の車両で市民を誘拐するなんて。アメリカ合衆国大統領に、そんなことを訴えなくてはならないなんて」

ツイートとともに、ブラウンはポートランドにおける連邦治安機関職員の最近の活動について語ったナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の番組の一部をシェアした。

「連邦政府による露骨な権力乱用だ」と、ブラウンはNPRの番組で語った。「(職員は)デモの鎮静化にはふさわしくない訓練を受けた人々だ。率直に言って、彼らはすでに困難な状況を悪化させている」

ネイション誌が入手した内部メモによると、国土安全保障省と税関・国境警備局のさまざまな部門から集められた連邦機関の職員が、7月4日の週末を前にポートランドに派遣された。

彼らは、トランプが6月26日に出した全国の彫像やモニュメントの保護を目的とする行政命令に対応するために、国土安全保障省が立ち上げた特別なタスクフォースに属している。

警察の残虐行為や人種差別に抗議する運動が全米に広がるなか、一部のデモ参加者が人種差別行為をしたとみなされる歴史的人物の彫像を汚したり、取り壊したりする事件がポートランドをはじめ数十の都市で相次いでいる。

自由と権利の侵害

連邦職員らは迷彩服を着用し、デモ隊に催涙ガスと暴動鎮圧用の武器を使用、さらにデモ参加者を所属不明の車両に乗せて拘束するところを目撃されている。ブラウンは、ポートランド市から連邦職員をすぐに退去させてほしいと国土安全保障省に依頼している。

しかし国土安全保障省のケン・クチネリ副長官代理はNPRで、当局はこの作戦をすぐに終わらせるつもりはない、と語った。

「ポートランドだけでなく、われわれに管理責任がある全国各地の施設に対してはすべて同じ姿勢で臨む」と、クチネリは語った。

ブラウンの報道官チャールズ・ボイルは本誌に電子メールで、連邦職員が相当な理由なくデモ参加者を逮捕したという報告について「非常に心配している。市民の自由と憲法上の権利の侵害だ」と述べた。

「国土安全保障省に唯一頼みたいのは、連邦職員の退去の要請だ」と、ボイルは書いている。「連邦法執行機関からは職員の活動について、何の知らせもない。だが連邦職員の行動は連邦政府の管轄下にある」

<参考記事>超法規の政府職員を動員してデモ制圧に乗り出したトランプ
<参考記事>米シアトルで抗議デモ隊が「自治区」設立を宣言──軍の治安出動はあるか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国当局、国有企業にチベットへの産業支援強化求める

ワールド

トランプ氏に解任権限なし、辞任するつもりはない=ク

ワールド

ラセンウジバエのヒトへの寄生、米で初確認 情報開示

ビジネス

午前の日経平均は反落、FRB理事解任発表後の円高を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中