最新記事

日米同盟

イージス・アショア導入中止は、日米同盟を再考する絶好のチャンス

Japan Quits Aegis Ashore

2020年7月14日(火)19時10分
ジェフリー・ホーナン(米ランド研究所研究員)

日米は新たな協力関係を話し合う時期(ルーマニアのイージス・アショア) ADEL AL-HADDAD-INQUAM PHOTOS-REUTERS

<突然発表された迎撃ミサイルシステム導入中止の判断は、理にかなっている上に日米双方にとって良い機会に>

この6月、日本が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の配備計画を停止したというニュースは、日米の多くの国家安全保障関係者を驚かせた。

計画停止の理由は理解できる。費用は膨れ上がり、技術的な問題もあった。しかし計画停止によって、日本の安全保障と日米関係にさまざまな問題が生じかねない。

これまで日米同盟でそうだったように、今回の緊張も両国が乗り越えられるものなのかもしれない。だが、これにより日米同盟が強まるのか弱まるのかは、まだ分からない。

日本の河野太郎防衛相は、計画停止に至った日本側の懸念は主にコストと技術的な問題の2つだと語った。まず、迎撃ミサイルブースターが住宅地に落下するのを完全に制御する自信がなかった。河野によればソフトウエアを修正してもうまくいかず、ミサイルのハードウエア自体の再設計が必要になる可能性があった。それには18億ドルの追加費用と10年の期間を要する。この費用と時間を考慮すると、国家安全保障会議(NSC)で最終的に承認された計画を保留せざるを得ず、事実上、計画を断念することになった。

傷が浅い段階での決断

イージス・アショア計画の費用が上積みされていったのは事実だ。当初の見積もり費用は、購入費に30年間の運用・維持費を加えて21億5000万ドルだったが、総額は41億ドルに膨れ上がり、さらに18億ドルの追加投資を迫られた。その上、政府の新型コロナウイルス対策に関する追加歳出によって、防衛予算が削減される可能性も出てきた。傷が浅いうちに計画を断念したのも理解できる。

日本の弾道ミサイル防衛システムは、2層防衛を基本としている。海上自衛隊は、ミサイルを標的にできる迎撃装置を備えたイージス艦を7隻配備している(近く8隻に増える)。海自のイージス艦が迎撃に失敗した場合、ミサイル防衛の役割を担うのが航空自衛隊だ。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を導入した空自の高射隊は全国に配備されている。

もともとイージス・アショアの目的は、イージス艦の追加支援だった。2017年に閣議決定した計画の下、日本はアメリカからシステム2基を購入し、2025年までに秋田県と山口県に配備する計画を進めてきた。

【関連記事】墜落したF35、1機分のお金で何ができたか―「欠陥商品」147機6兆2000億円を爆買いの愚

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレは依然高すぎる、政策変更は差し迫らず=米ク

ワールド

イラン空域制圧へ作戦順調、米が新指導者候補を複数検

ビジネス

米2月雇用、9.2万人減で予想外のマイナス 失業率

ビジネス

米原油先物、23年10月以来の高値 北海ブレント9
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園で撮影された「恐怖の瞬間」映像にネット震撼
  • 4
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 5
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 8
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 9
    アルツハイマーを予防する「特効薬」の正体とは? …
  • 10
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中