最新記事

中印関係

中国兵は丸腰の部隊を襲撃か 国境衝突でインド側証言

2020年7月10日(金)11時11分

首の動脈切断

ロイターが閲覧した5件の死亡診断書によると、兵士のうち3人は「首の動脈が切断」されており、2人は頭部に「鋭利あるいは先のとがった物体」による傷があった。死亡診断書が入手できた5人は全員、首と額に目視できる傷があった。

インド政府高官は「乱闘状態だった。こん棒や棒切れなど手当たり次第の物が使われ、素手で戦った者さえいた」と説明。中国が約束通り係争地から撤退し建造物を解体したかを確かめるため、ビハール連隊の指揮官が小隊を率いてパトロール地点に出掛けた時に衝突が始まったと述べた。インド兵は、鉄の棒やくぎの付いた木の棍棒を持った中国兵に襲われたという。  

丸腰のインド兵が、自分たちの連隊よりも大きな部隊に制圧された可能性が示されたことで、インドでは中国への憎悪が一層強まるかもしれない。また、緊張必至の現場に、なぜ丸腰の兵士が出されたのかという疑問が高まる可能性もある。

インド野党、国民会議派のラフール・ガンジー党首は「中国はよくも丸腰の兵士を殺したものだ。わが兵士らは、なぜ丸腰で殉職させられたのか」とツイートし、インド政府に全面的な説明を要求した。

現場に居合わせた別の2人のインド兵士と話したという遺族によると、パトロールに出向いた小隊は少人数の中国兵に道をふさがれ、近くにあったテントや小さい見張り塔を巡って口論になった。

ロイターはそこで何が起きたのか、詳細を確認することはできなかったが、インド政府の公式発表によると、いったんインド兵側はテントや見張り塔を、インド側領土にあるという理由で占拠した。

生存者と話した遺族によると、すぐに中国兵が大挙して、投石や手にした鋭利な武器で反撃してきた。いったん退却したものの、行方不明になった指揮官を捜すうちに再び中国兵が襲ってきたという。

衝突のあった地域に動員されたインド兵士の1人は、ロイターに対し「中国側は数でわれわれを圧倒していた」と述べた。

死亡した兵士3人の家族は、遺体を届けに来た兵士らから聞いた話として、一部の戦闘員はもみ合いの中で急流のガルワン川に落ちたと述べた。

インド政府筋は、一部の遺体は翌朝、川から引き揚げられ、数人は低体温症で死亡していたと述べた。


Rupam Jain Sanjeev Miglani

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊はあり得るのか
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200714issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カンボジア、タイとの国境紛争で国際司法裁判所に解決

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕と報道 標的リスト

ビジネス

午前の日経平均は反発、円安が支援 中東情勢警戒はく

ワールド

イラン、イスラエル北部にミサイル攻撃 国際社会は沈
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中