最新記事

野生動物

超希少ゴリラの子連れの群れ、初めて撮影に成功

Rarest Gorilla Subspecies Appears on Camera with Babies

2020年7月9日(木)16時40分
アンドルー・ウェーレン

絶滅が懸念されるクロスリバーゴリラだが、次世代が元気に育っているようだ WCS NIGERIA

<エコツーリズムによるゴリラとの共存を目指し、自ら狩猟を禁じてきたアフリカの村にも大きな希望が>

アフリカのナイジェリアとカメルーンの国境にまたがる1万2000平方キロ程の山地の森に生息するクロスリバーゴリラは、今ではせいぜい300頭しか残っていないとみられている。ゴリラの亜種の中でも最も深刻に絶滅が懸念される種類だが、生息数の回復に希望の兆しが見えてきた。

国境地帯のムベ山脈に設置されたカメラトラップ(自動撮影装置)が今年5月と6月にとらえた画像に、赤ちゃんを連れた群れの姿が映っていたのだ。複数の幼いゴリラを連れたクロスリバーゴリラの群れが撮影されたのは、これが初めてだ。

ニューヨークのブロンクス動物園に本部を置く野生生物保護協会(WCS)が7月8日に公開した画像には、成熟したゴリラの群れに数頭の幼いゴリラが混じり、母ゴリラの背中に乗った赤ちゃんの姿も映っている。

密猟の犠牲に

クロスリバーゴリラは1904年に初めて記録され、1980年代までに絶滅したと見られていた。その後生息が確認されたが、撮影されたのは数回にすぎない。人が近づきにくい未開発の山地に生息し、人目に触れることはめったにない。

2012年にカメルーンのカグウェネ・ゴリラ保護区に設置されたカメラトラップがとらえた画像がその理由を物語っていた。そこに映った群れの1頭は、片手を失っていたのだ。WCSは、密猟者が仕掛けた罠から逃れようとして負傷したと推測した。

片手のない個体が映った映像


密猟は何十年も行われてきたが、それでも繁殖が可能な生息数はかろうじて維持されてきたようだ。その証拠に2013年に撮影された数点の画像には、赤ちゃんを連れた1頭の母ゴリラが映っていた。

今回の画像はそれ以上に保護関係者を喜ばせた。複数の幼いゴリラを含む単一の群れを初めて確認できたからだ。

「若いクロスリバーゴリラが多くいるのを目の当たりにして、とても興奮した。何十年も狩猟が行われた末、今では十分に保護され、繁殖が行われていることが分かった」と、WSCのクロスリバーゴリラ保護プロジェクトを率いるイナオヨム・イモンは報道資料で述べている。「地元のハンターはゴリラ狩りをやめたようだが、密猟の脅威がなくなったわけではない。さらに効果的な対策を打ち出していく必要がある」

<参考記事>ボツワナでゾウが275頭以上が原因不明の大量死 政府が調査
<参考記事>老化しない唯一の哺乳類、ハダカデバネズミ「発見」の意味

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

完全失業率は2.5%、3カ月連続で同水準 有効求人

ビジネス

JPモルガン、新興国株価指数の年末目標引き上げ 貿

ビジネス

小米が電動SUV「YU7」を新発売 価格はテスラ車

ビジネス

原油市場、供給途絶の可能性低い オプションが示唆=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中