最新記事

諜報機関

ロシア諜報機関の汚れ仕事を担う、「29155部隊」は掟破りの殺し屋集団

Audacious but Sloppy Russian Spies

2020年7月8日(水)11時20分
エイミー・マッキノン

GRUはプーチンの命を受けて暗躍 ALEXEI BABUSHKIN-SPUTNIK-KREMLIN-REUTERS

<アフガニスタンの米兵に懸賞金を懸けた「29155部隊」──目的のためなら手段を選ばない秘密部隊の動向でロシアの狙いが見えてくる>

ロシア軍の諜報機関である参謀本部情報総局(GRU)がアフガニスタンの武装勢力に金を渡し、現地にいるアメリカ兵を殺させている──そんな暴露記事がニューヨーク・タイムズ紙に載ったのは6月26日のこと。4日後の続報ではGRU系の銀行口座からタリバン系の口座への送金記録が存在することも明かした。

GRU──それはロシア大統領ウラジーミル・プーチンの命を受け、地の果てまでも出向いて暗躍する闇の組織。4年前の米大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン陣営の電子メールを盗み、ばらまいたのも彼らだ。

タリバンに米兵殺しを持ち掛けたとされるのはGRUの29155部隊。掟破りの殺し屋集団で、知られている限りでもモンテネグロでのクーデター未遂や、イギリスでのセルゲイ・スクリパリ(GRU元大佐でイギリスの二重スパイ)毒殺未遂に手を染めている。

また29155部隊が米兵殺害に関与している可能性については、昨年段階で大統領デイリー・ブリーフ(PDB、機密情報報告)に記載されていたという。つまり、ドナルド・トランプ大統領はその時点で事態を把握していた。

この部隊は、いわゆる非公然活動に従事しているとされるが、そのわりに仕事が雑なことでも知られる。例えば同じ偽名を何度も使ったりする。だから調査報道のプロであれば、リークされた出入国記録や航空機の乗客名簿といったデータの解析によって、そのメンバーの足取りをたどり、正体を突き止めることも難しくない。

この点で成果を上げているのが、オープンソース型の調査報道サイト「べリングキャット」だ。かつてCIAの秘密工作を統括していたマーク・ポリメロプロスも、ベリングキャットの情報は「極めて正確」だと評している。

なぜか作戦はお粗末

ロシアの諜報機関にはGRUと対外情報庁(SVR)、ロシア連邦保安局(FSB)の3つがある。頂点に立つのはFSBだが、「汚れ役」としてリスクの大きな仕事を引き受けているのがGRUだ。

29155部隊は少なくとも10年前から活動していたと考えられるが、その存在が知られるようになったのは2018年のスクリパリ暗殺未遂事件からだ。

事件が起きたのは同年の3月。アレクサンデル・ペトロフとルスラン・ボシロフを名乗るロシア人の男2人が、英ソールズベリーにあるスクリパリの自宅玄関のドアノブに神経剤ノビチョクを塗布。これを触ったスクリパリは意識不明の重体に陥ったが、なんとか一命は取り留めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏大統領、6月G7サミット後にトランプ氏を夕食会に

ワールド

レバノンは食料安保の危機と国連、イスラエル攻撃の南

ワールド

米EU 、 重要鉱物確保で合意間近と報道 中国支配

ワールド

台湾3月輸出額、初の800億ドル突破 AI関連需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 7
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中