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韓国でも女性スポーツ選手が自殺 22歳のトライアスリートを追い込んだセクハラといじめの実態

2020年7月16日(木)19時25分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

チームメイトもセクハラで告発

調査によると、チェ・スクヒョン選手は今年の2月から様々な組織に対してパワハラやいじめを訴え始めていた。しかし、警察に暴行を訴えても大した問題ではないと、取り合ってもらえず、その後5つの組織に6度にわたって訴えたものの、いずれも相手にされず、最後に大韓体育会(日本のスポーツ庁に相当)の人権センターに電話した後、自らの命を絶ってしまった。

チェ・スクヒョン選手の死によって明るみになった驚愕の事実。これに続き、チェ選手とチームメイトだった女子トライアスロン選手2名が記者会見を開いて、さらなる告発をした。それによると、チームドクターは治療と言いながら胸や太ももなどを執拗に触るというセクハラをおこなっていた。さらに、監督は選手が国際大会に出場するたびに、国や連盟からの支援金があるにもかかわらず、各選手から80〜100万ウォン程の資金を徴収していたという疑惑も出てきている。

「チームドクター」はドクターではなかった

事件の深刻さが注目され始め、文在寅大統領は文化体育省幹部など関係省庁を叱咤し、徹底的な真相究明と対策作りを命じている。今月13日には早速チームドクターだったアン・ジュヒョン容疑者が警察に拘束された。そこで明らかになったのは、なんと彼は医師免許が無かったにもかかわらずドクターとしてチームに所属していたことが発覚したのだ。

アン・ジュヒョン容疑者は観念したのか、警察に一部の容疑を認める供述を始めたという。現在、その他容疑がかけられている監督や一部の先輩選手らは、チェ選手に対する暴行・暴言を全面否認している状態だ。だからこそ、アン・ジュヒョン容疑者の供述は、監督及び選手の疑いを糾明するのに大きな助けになると見込まれている。

韓国のスポーツ選手へのセクハラ・パワハラ問題は、今回が初めてではない。以前から何度かニュースに取り上げられてきた。2018年には元テニス選手のキム・ウニ氏が、10歳のころからコーチから性的暴行を受けていたと海外メディアを通じ告白し大きな衝撃が走った。このコーチはその後、強姦致傷罪で禁固10年の刑が言い渡されている。

2014年ソチオリンピック女子カーリングチームの監督を務めたチェ・ミンソクは、その後選手たちからセクハラを訴えられ辞任している。同年、韓国スポーツオリンピック委員会は、「女子アスリートが受けたセクハラ被害」の調査報告を発表し、なんと7人の1人が被害にあったことがあると回答した。

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