最新記事

アメリカ経済

2度目のロックダウンで米企業10兆ドルの「債務爆弾」が破裂する

A $10 Trillion Corporate Debt Bomb is Waiting to Explode the U.S. Economy

2020年7月30日(木)18時55分
ブレンダン・コール

米旅行協会は今週、旅行業界のリーダー14人の連名で、ドナルド・トランプ米大統領と議会に書簡を提出。苦境にあえぐ旅行部門を再生させるため、新型コロナウイルスの検査体制を拡充するよう求めた。

同協会は、コロナの直撃を受けた旅行業界の損失により、2020年の米GDPは前年に比べ1.2兆ドル減る恐れがあると警告した。資金繰りに苦しみ、デフォルト(債務不履行)に陥りかねない企業は、旅行会社だけではない。

「デフォルトの波が広がれば、信用スプレッド(信用力の低い債券に上乗せされる金利)が広がって、(格付けの低い)企業の資金調達コストはさらに上昇する」と、ガリーは言う。

「そうなるとさらに企業の倒産が相次ぎ、失業も増えて、大量倒産・大量失業に陥りかねない。景気の冷え込みが長引けば、それに応じてデフォルトも増えるだろう。特に信用力の低い企業は資金を調達できなくなる」

国際金融協会(IIF)によると、デフォルトに陥った世界の非金融企業の発行済み社債の総額は、額面で今年第2四半期に史上最高の940億ドルに上り、その4分の3を米企業が占める。

V字回復はなし

デフォルトの嵐がいつまで続くかは、パンデミックの収束時期にかかっていると、IIFのエムレ・ティフティク研究ディレクターは本誌に話した。「収益の改善が見込めない状況ではなおのこと、企業が過剰の借り入れを長く続けることは不可能だ」

「債務が増え続ければ、多くの企業は今後の危機に対して今以上に脆弱になり、新規の設備投資は大幅に減り、中長期的には生産性の向上と成長が阻まれるだろう」

ユタ大学デービッド・エクルズ経営大学院のジョナサン・ブロガード教授(金融学)も今後何カ月かデフォルトが増え続けるとみている。

「大いに期待されたV字回復は起きそうもない。多くの製品とサービスの需要が低下している状況では、(デフォルトの)急増は驚くに当たらない。COVID-19が猛威を振るい、感染拡大が長引けば、それに応じてデフォルト件数も増え続けるだろう」と、ブロガードは本誌に語った。

「再び大規模な経済活動の停止が必要になれば、各国政府と中央銀行は、大量倒産を防ぐために、これまでに講じてきた支援策を延長せざるを得ない」

【関連記事】「コロナ失業」のリスクが最も高い業種は?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金現物が最高値、4200ドル視野 米利下げ観測や米

ビジネス

サッポロHD、不動産事業売却で「決定した事実ない」

ワールド

IMF、世界市場の「無秩序な調整」警告

ワールド

ハマス、4人の遺体引き渡し イスラエルは遅延理由に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 6
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中