最新記事

動物

世界最大級の鳥コンドル 5時間、170キロ、羽ばたかずに飛行していた

2020年7月28日(火)18時50分
松岡由希子

この「最も重い鳥」は、ほとんど羽ばたくことなく、空を飛んでいた...... Patrick Gijsbers-iStock

<空を飛ぶ鳥のなかで最大級の種として知られるアンデスコンドルは、ほとんど羽ばたくことなく、空を飛んでいることが明らかとなった......>

南米のアンデス山脈で生息し、主にシカやウシなどの大型獣の死体を食べるアンデスコンドルは、体重が15キロにも達し、空を飛ぶ鳥のなかで最大級の種として知られる。このほど、この「最も重い鳥」は、ほとんど羽ばたくことなく、空を飛んでいることが明らかとなった。

5時間17分にわたって一度も羽ばたかずに172キロメートルを飛行

英スウォンジー大学、独マックス・プランク動物行動研究所、アルゼンチン・コマウエ国立大学の共同研究チームは、独自で開発したフライトレコーダーを若いアンデスコンドル8羽に装着し、それぞれの羽ばたき回数や飛行時間などを216時間にわたって記録した。

2020年7月13日に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表された研究論文によると、アンデスコンドルが羽ばたいた時間は飛行時間全体のわずか1%にとどまり、なかには、5時間17分にわたって一度も羽ばたかずに172キロメートルを飛行したものもいた。

アンデスコンドルの羽ばたきの75%以上は離陸時に行われていた。また、弱い熱上昇気流の間を移動する際にも、地上に近づきそうになると、羽ばたき回数が増えた。

研究論文の筆頭著者でマックス・プランク動物行動研究所の運動生態学者ハンナ・ウイリアムズ博士は「鳥は、気流に乗って移動コストを最小化できる気象条件下で飛ぶが、あえて『コスト』をかけて羽ばたき、飛行せざるをえないときもある」としたうえで、「いつ、どこで着陸するか、どのタイミングで気流間を移動するかを判断することは重要だ。一旦着陸すれば、また離陸する必要があるため、不要な着陸によって『飛行コスト』がかさんでしまう」と指摘している。

「ほとんど羽ばたくことなく飛翔するとは、衝撃的な発見だ」」

研究論文の共同著者でスウォンジー大学のエミリー・シェパード教授は、AP通信の取材に対して「コンドルは熟練したパイロットだが、これほどまでに飛行のエキスパートであるとは思わなかった」と驚きを示している。

また、米スタンフォード大学のデービッド・レンティンク博士は「コンドルがほとんど羽ばたくことなく飛翔するとは、衝撃的な発見だ」と述べている。また、この研究成果は、若いアンデスコンドルでさえ、気流に乗ってエネルギー消費を最低限に抑えながら効率的に飛行する術を身につけていることを示すものとしても注目されている。

研究チームでは、一連の研究成果をふまえ、コンドルの飛行中の判断プロセスについてさらに研究をすすめ、目に見えない気流の位置をどのように突き止めているのかを解明する方針だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ紛争は26年に終結、ロシア人の過半数が想

ワールド

米大使召喚は中ロの影響力拡大許す、民主議員がトラン

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中