ニュース速報
ビジネス

アングル:ラグジュアリー業界、シェア獲得に向け支出拡大 トランプ関税などに対応

2026年02月08日(日)08時02分

FILE PHOTO: Cosmetics by Estee Lauder are displayed at a cosmetics store in a mall, Mumbai, India, May 28, 2025. REUTERS/Francis Mascarenhas/File Photo

Juveria Tabassum

[5日 ロ‍イター] - 米化粧品大手エスティ・ローダーや米高級‌衣料大手ラルフローレンなどラグジュアリー業界はあらゆる手段を講じて、トランプ米大統領の関税措置による悪影響を振り払いつつ、所得層による分断が進む市場でシェアを獲得しようと躍起になっている。具体的には広‌告費の増額からテニスのウィンブルドン選手​権との提携まで、さまざまな動きが挙げられる。

消費者と直接やり取りする企業は、トランプ関税によって需要が冷え込んだ上に投入コストが上昇し、昨年最も大きな打撃を受けた業種の1つだった。各社は今、状況に対応するため戦略を練り直し、その結果として支出を増やしている。

アパレル、アクセサリー、化粧品などの企業は、高所得世帯を主なターゲットに据え、マーケティングを強化‌したり、よりプレミアムな製品に資金をつぎ込んだりしている。一方で低・中所得層の消費者は、雇用市場が軟化する中、家賃や食料品価格の上昇に圧迫されている。

高級ブランド「COACH(コーチ)」を傘下に持つ米タペストリーはマーケティング支出を40%ほど増やした。傘下の高級ブランド「ケイト・スペード」に関税の影響が表れ始めているにもかかわらず、主力商品でコーチの主力バッグである「タビー」の好調を追い風に、5日発表した2025年10-12月期決算は利益率が上昇した。

コーチは過去6カ月間の広告キャンペーンで、俳優のエル・ファニング、シンガーソングライターの幾田りら、メキシコ系シンガーソングライターのオマー・アポロ、ファッションモデルのKōkiなど、Z世代に人気のセレブを起用してきた。同社によると、同四半期に世界全体で新たに約370万人の顧客を獲得し、その3分の2程度がZ世​代だった。

タペストリーのジョアン・クレボイセラ最高経営責任者(CEO)は「こうした投資は当社⁠のブランド構築をさらに確固たるものにするのに役立っている」と述べた。

これらの投資は、関税の影響にさらされた製品が‍企業在庫に流れ込み始め、関税による影響が今後数カ月でピークに達するとの見通しが広がる中で行われている。

5日株式市場でタペストリーの株価は7%上昇した。

一方、エスティ・ローダーやラルフローレン、カナダの高級衣料品カナダ・グースもタペストリー同様にマーケティング支出を増やしているが、投資家の見方はもっと懐疑的だ。

シンガポールに拠点を置くヤル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、イリア・キスリツキー‍氏は「しばらく不安定だった企業については、リスクの高い決算が出てくる可能性がもっと大きい」と‍指摘。「マーケテ‌ィング予算という観点では、企業はアフォーダブル・ラグジュアリー(手の届く高級品)‍分野の需要が低下する可能性を認識しておくべきだ」と述べた。

エスティ・ローダーは、プレミアム香水や化粧品分野に注力し、新たに高級価格帯商品を投入。ステファン・ドゥ・ラ・ファヴリーCEOの下で進めている経営立て直し策の一環として、マーケティングを強化している。同社は需要低迷と原材料コスト上昇で経営が圧迫される状況が数年間にわたり続き、経営再建を図っている。

エスティ・ローダーは、今年後半に関税の影響で年間利益が1億ドル⁠押し下げられ、当四半期の利益率は50ベーシスポイント(bp)低下すると予想している。こうした見通しを受けて同社の株価は5日に20%急落した。

ラルフローレンはウィンブルドンや全米オープン・テニス選手権などのキャンペーン⁠を通じてブランド構築を強化し、四半期の営業コストが前年同期比‍で12%増加した。支出の増加と北米での厳しい事業環境を背景に、現四半期の利益率は約80―120bp低下すると見込んでいる。

カナダ・グースは四半期利益が市場予想を下回り、株価は急落した。同社は関税の影響を理由に挙げて昨年5月に業績見通しの公表を一時的に停止し、いまだ​に再開していないが、その一方でマーケティング支出を増やし、製品ラインの拡充も進めている。

BNPパリバ・エクイティ・リサーチのシニアアナリスト、ローラン・バシレスク氏は「投資家に対して、支出の継続的な増加がいずれは正常化し、利益の減少が止まるという信頼感を与えるためにも、少なくとも四半期ベース、できれば年間の業績見通しの公表を再開する必要がある」と指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防総省、ハーバード大との軍事教育プログラム終了

ワールド

米が6月までの戦争終結要求、ロ・ウクライナに=ゼレ

ビジネス

アングル:ラグジュアリー業界、シェア獲得に向け支出

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 5
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中