最新記事

中国

北京コロナ第二波はなぜ起きたのか?

2020年6月17日(水)11時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

各番組で重複した質問が多いので、呉尊友氏の回答をまとめてみよう。

●北京ではほぼ60日間にわたり、本土から発生した新規感染者は出ていない(海外から戻ってきた中国人が飛行場で検査隔離されて、そこで陽性と判明した場合はある)。したがって北京の現地で自然発生したということはまず考えられない。

●だとすると、感染ルートには2種類考えられる。1つはコロナ感染した「物」が北京に持ち込まれたということで、もう一つは感染した人が北京に入り込んでしまったということだ。

●冷凍された「物」に付着したウイルスは長く生き続ける。研究のためにウイルスのサンプルを保存したり運んだりするときには、低温であればあるほど生きている時間は長い。その意味で、市場で扱う冷凍食品がもし汚染していたとするなら(冷凍食品にコロナウイルスが付着していたとするなら)、このウイルスは2~3ヵ月は生き続けると考えていい。

●今のところまだ完全に食品から感染したのだと確定しているわけではないが、しかし食品汚染の可能性が最も高いだろうと疑われている。まだ研究を進めないと決定的なことはなにもいえないが、しかし一つだけ注意しておきたいことがある。

それは「できるだけ輸入した農産物や冷凍食品を買わないようにした方がいい」ということである。買ったとすれば、必ず煮てから食べること。絶対に生のまま食べてはならない。

●野菜類に関しては国産(中国産)なので汚染されている心配はあまりする必要はないが、それでも、それを扱う手の衛生は留意した方がいい。

●感染した人が北京に入ってきてしまった場合を考えると、おそらく風邪程度の非常に軽度の症状しかないか、あるいは無症状感染者である場合が多い。

●感染第二波を招いたのが「人」であった場合は、5月末頃に感染していたものとみなすことができる。

●われわれ研究者が感染者の体内から分離したウイルスと、北京新発地卸売市場の「物」の表面から採取したウイルスは、完全に一致している。

●中国でこれまで(武漢などで)流行してきたウイルス株と、世界各地で今現在流行しているウイルス株を比較すると、今般の北京で発見されたウイルスは、ヨーロッパで流行している主要なウイルス株である可能性が高いことを発見した。

但し、ヨーロッパで流行しているウイルス株は必ずしもヨーロッパから来ているとは限らない。たとえばアメリカで流行しているウイルス株のほとんどは、ヨーロッパから来ているが、しかし「どの国から来たウイルス株である」というのは非常に特定しにくい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中