最新記事

日本社会

日本の未婚男性は長生きしないのに、女性は既婚より未婚の方が長生きする不思議

2020年6月10日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

女性の死亡年齢中央値を出すと、未婚者が81.9歳、有配偶者が78.3歳となる。男性では未婚者の方が明らかに早死にするが、女性はその逆だ。男女で傾向が反転するのは興味深い。以上は2018年のデータだが、単なる偶然でないことは<表2>から分かる。

data200610-chart02.jpg

大よそ10年間隔のデータだが、男性はどの年でも未婚者が明らかに早死にする。その度合いは昔の方が大きく、1980年では未婚者と有配偶者で死亡年齢中央値が33歳も違っていた。当時は未婚率が低く、不利な属性の人が未婚者に凝縮していたためだろう。

女性をみると、1990年までは男性と同じく「未婚 < 有配偶」だったが、2000年以降は未婚者の方が長生きする傾向が定着している。結婚生活が「生」に及ぼすインパクトの性差は、日本ではある程度の普遍則と言えそうだ。

女性にとって結婚が重荷になる理由はいくつか考えられる。まずは出産による身体への負荷で、近年は晩産化もありその度合いが強まっている。夫の家事分担率が低く、既婚女性の日々のストレスは尋常ではない。出産・育児で離職を強いられたり、夫の転勤のたびにキャリアや人間関係をリセットされたりするのも苦痛だ。正社員として勤めることが減り、会社の健康診断も受けられず、自治体の健診に行こうにも幼児がいる場合、その時間もがとれない。

昨年の出生数は86万人と前年より5万人以上減り、少子化は進む一方だ。その最大の要因は未婚化だが、結婚がこうも重荷となれば、それをためらう若い女性が増えるのも無理はない。合計特殊出生率が1.0を割っている韓国では、その傾向が顕著になってきている(「出生率0.98、韓国女性に広がる新たな価値観」ヤフーニュース、2020年2月19日)。

家庭生活の負荷が女性に偏っている現状を変えるべきで、コロナで在宅勤務が増えてる今は、そのいい機会だ。

<資料:厚労省『人口動態統計』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中