最新記事

感染症

もうすぐ冬到来の南米 大気汚染で新型コロナ致死率上昇の恐怖

2020年5月8日(金)18時45分

寒さか新型コロナか

チリでは過去6年間、薪ストーブの利用制限や禁止といった厳しい措置が導入され、クリーンな燃料への切り替えを後押しする政府出資の対策も講じられてきた。大気の専門家や医療関係者、地元指導者からは、新型コロナを受け、政府がそうした対策を強化すべきだとの声が高まっているが、今のところ対策は発表されていない。

元環境相のマルセロ・メナ・カラスコ氏は、ハーバード大のコロナ致死率の論文を踏まえれば、チリでは大気汚染緩和のための財政支出は「必須」だと強調する。

しかし公衆衛生の専門家によると、代替的な暖房設備を提供せずに薪ストーブの使用を禁じれば、それはそれで問題を招く。

国立外科大学で新型コロナ対策チームの指揮を執るマウリシオ・イラバカ氏は、寒冷な温度による健康被害の方が大気汚染よりも急速な死者増加につながるとし、そこに新型コロナ感染症が加われば医療態勢の崩壊につながりかねないと言う。

南米の他諸国でも、大気汚染がコロナ致死率を高める恐れがある。スイスのIQエアがリアルタイムで公表している大気質データによると、ペルーの首都リマ、ボリビアの首都ラパス、コロンビアの首都ボゴタでは、大気中の微粒子の水準が、ハーバード大がコロナ致死率を悪化させるとした数値を常に超えている状態だ。

テムコ市の地方評議会のアレハンドロ・モンダカ議長によると、市民、特に高齢者は大気汚染と新型コロナの相乗作用を恐れる一方で、夕方7時から朝7時まで薪ストーブを消すよう求められそうだと知って憤っている。「環境当局者に言いたいのは、片手を胸に当て、もう一方の手をポケットに入れて(財政資金を使って)、お年寄りを助けてほしいということだ。さもなければ寒さか新型コロナ、どちらかが原因でお年寄りが死んでしまう」と訴えた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」
・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(7日現在)
・「ブラック企業・日本」がコロナ禍で犯し続ける不作為


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 10
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中