もうすぐ冬到来の南米 大気汚染で新型コロナ致死率上昇の恐怖
寒さか新型コロナか
チリでは過去6年間、薪ストーブの利用制限や禁止といった厳しい措置が導入され、クリーンな燃料への切り替えを後押しする政府出資の対策も講じられてきた。大気の専門家や医療関係者、地元指導者からは、新型コロナを受け、政府がそうした対策を強化すべきだとの声が高まっているが、今のところ対策は発表されていない。
元環境相のマルセロ・メナ・カラスコ氏は、ハーバード大のコロナ致死率の論文を踏まえれば、チリでは大気汚染緩和のための財政支出は「必須」だと強調する。
しかし公衆衛生の専門家によると、代替的な暖房設備を提供せずに薪ストーブの使用を禁じれば、それはそれで問題を招く。
国立外科大学で新型コロナ対策チームの指揮を執るマウリシオ・イラバカ氏は、寒冷な温度による健康被害の方が大気汚染よりも急速な死者増加につながるとし、そこに新型コロナ感染症が加われば医療態勢の崩壊につながりかねないと言う。
南米の他諸国でも、大気汚染がコロナ致死率を高める恐れがある。スイスのIQエアがリアルタイムで公表している大気質データによると、ペルーの首都リマ、ボリビアの首都ラパス、コロンビアの首都ボゴタでは、大気中の微粒子の水準が、ハーバード大がコロナ致死率を悪化させるとした数値を常に超えている状態だ。
テムコ市の地方評議会のアレハンドロ・モンダカ議長によると、市民、特に高齢者は大気汚染と新型コロナの相乗作用を恐れる一方で、夕方7時から朝7時まで薪ストーブを消すよう求められそうだと知って憤っている。「環境当局者に言いたいのは、片手を胸に当て、もう一方の手をポケットに入れて(財政資金を使って)、お年寄りを助けてほしいということだ。さもなければ寒さか新型コロナ、どちらかが原因でお年寄りが死んでしまう」と訴えた。

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