最新記事

中国

習近平、トランプにひれ伏したか?徴収した報復関税の返還命令

2020年5月15日(金)21時50分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

トランプ大統領と習近平国家主席(2019年6月29日、大阪のG20首脳会議で) Kevin Lamarque−REUTERS

中国は12日、米中貿易協定第一段階を実行すべく、米国から徴収した報復関税を返還する指示を出し、オーストラリアからの肉製品輸入を停止した。後者は報復措置か。強い者に弱く、弱い者には強く出る中国の戦略がそこにある。

中国政府「米国から徴収した報復関税の返還手続きをせよ」と国内企業に指示

アメリカのトランプ大統領が激しく対中批判を強化している中、中国政府はアメリカに対して、米中貿易協定「第一段階協議」に即して、それを粛々と実行すべく、5月12日に政府指示を発布した。

発布したのは「国務院関税税即委員会」で、通知のタイトルは「第二期対米追加関税商品第二次排除リストに関する国務院関税税即委員会の公告」で、文書番号は【税委会公告〔2020〕4号】である。

内容は以下の通りだ。

――<対米追加関税商品排除活動試行展開に関する国務院税関税即委員会の公告>(税委会公告〔2019〕2号)に基づき、国務院関税税即委員会は申請主体が提出する有効な申請に対して審査を開始し、決められたプロセスに沿って第二期対米追加関税商品に対する一部分の第二次排除の関連商品名を以下のごとく公告する:添付リストに列挙している商品に対して2020年5月19日から2021年5月18日までの1年間、米国の301措置に対抗する追加関税を課税しない。また既に徴収した追加関税に関しては、これを返還するものとする。関連する輸入企業はリストを交付した日から6カ月以内に税関に対して規定に沿って手続きを行わなければならない。

公文書の文言なので非常に硬いが、咀嚼してご説明すると「これから1年間は米国からの輸入商品に対して(報復関税としての)追加関税を徴収しないようにしますよ」ということであり、「すでに徴収してしまった関税は、6ヵ月以内に返還するよう手続きをしなさいね」ということなのである。

前代未聞の措置ではないか。

5月14日のコラム<感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか_モスクワ便り>の前半に書いた通り、トランプ大統領は「アメリカは国家として中国を提訴し、損害賠償を要求する用意がある」と言い、「アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリア」の8ヵ国の弁護士会や民間シンクタンクあるいはアメリカの場合は州の検察当局などが対中損害賠償請求を用意している中、中国はアメリカに「跪(ひざまず)いている」と言っても過言ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

都区部CPI4月は1.6%上昇、高校授業料無償化や

ビジネス

ロイターネクスト:米経済は好調、中国過剰生産対応へ

ビジネス

アマゾン、インディアナ州にデータセンター建設 11

ビジネス

マイクロソフト出資の米ルーブリック、初値は公開価格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中