最新記事

感染症

ギリアドの新型コロナウイルス治療薬、治験失敗 WHOが誤って情報開示

2020年4月24日(金)09時26分

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は23日、米ギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス感染症治験薬の初期臨床試験が失敗に終わったと報じた。カリフォルニア州フォスターシティーで2018年5月撮影(2020年 ロイター/STEPHEN LAM)

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は23日、米ギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス感染症治験薬の初期臨床試験が失敗に終わったと報じた。これに対しギリアドは、早期に打ち切られた試験の結果であり、結論を導くことはできないと反論した。

FTの報道を受け、ギリアドの株価は4%超下落した。レムデシビルは新型コロナの有望な治療薬として注目を集めていた。

FTは、世界保健機関(WHO)が誤って公表した報告書の草稿の情報に基づき、ギリアドが中国で実施していた新型コロナ治験薬「レムデシビル」の無作為抽出による初期臨床試験で、症状の改善も血液中の病原体減少も示されなかったと報じた。

WHOは、ギリアドの試験に関する報告書の草稿が誤ってウェブサイト上に掲載され、ミスが発覚した後すぐに削除したと説明した。その上で、報告書は査読の段階にあるとし、完了後に正式に公表する方針を示した。

草稿が削除される前に医科学メディア「スタット(STAT)」が保存した画像によると、この試験には患者237人が参加し、158人にレムデシビルを、79人にはプラセボ(偽薬)を、それぞれ投与した。その結果、死亡率はレムデシビルを投与されたグループが13.9%、偽薬グループは12.8%と、大差は見られなかった。

ギリアドは声明で、WHOの草稿には不適切な解釈が含まれているとし、中国で実施された試験は被験者が少なく打ち切られたため、統計的に有意義な結果は導き出せないと反論。

その上で「データのトレンドからは、早い段階で治療を受けた患者で特に効果がある可能性が示されている」と指摘した。詳細は明らかにしていない。

みずほのアナリスト、サリム・サイード氏は「被験者がさほど多くない試験であり、信頼性の高い統計とは言えない」と指摘した。

レイモンド・ジェームズのアナリスト、スティーブン・シードハウス氏は、この中国の試験を受け、レムデシビルは重症患者には効かない可能性が高いという見方が広がるだろうと述べた。

医療関係者はこれまでに、レムデシビルのような抗ウイルス薬はウイルスが血液中で増殖するのを抑える仕組みであるため、発症早期に投与した方が効果が高いのではないかとの見方を示している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・日本はコロナ危機ではなく人災だ
・「既存の新型コロナウイルス抗体検査は信頼できない」ロシュCEO
・長崎港のクルーズ船「コスタ・アトランチカ」新たに14人の新型コロナウイルス感染 計48人に
・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている?


20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中