最新記事

アメフト

私が愛した名クオーターバック──トム・ブレイディの栄光に乾杯

My Favorite Brady Moments

2020年4月18日(土)11時00分
ハンク・ギルマン(本誌編集ディレクター)

ペイトリオッツの司令塔として20年活躍したブレイディは、個人最多となる6度のスーパーボウル制覇を達成 PATRICK SMITH/GETTY IMAGES

<NFL最強のペイトリオッツを率いたトム・ブレイディが他チームへ移籍、記憶に刻まれた素晴らしき瞬間を振り返る>

ついにやって来た。ニューイングランド・ペイトリオッツに入団して20年。NFL(全米プロフットボールリーグ)の優勝決定戦スーパーボウルに9回出場し、個人として最多の通算6度の優勝を果たしたクオーターバック(QB)、トム・ブレイディが移籍する日が。移籍先はタンパベイ・バッカニアーズだ。

ペイトリオッツの地元ボストンでは嘆きの声が上がったが、もういい頃合いだ。一ファンとして言わせてもらえば、昨シーズンのブレイディはそれまでと違った。昨年のスーパーボウルの後、栄光の中で引退すべきだったと、ボストン・グローブ紙のスポーツ担当コラムニストのダン・ショーネシーは発言したが、その意見には激しく同意する。

だが本人は引退を選択しなかった。ならば、幸運を祈ろう。そして、たくさんの思い出をありがとう。チームの司令塔としてブレイディが輝いていた瞬間を(あまりに多過ぎる! とペイトリオッツのアンチは言うだろうが)思いつくままに振り返ってみよう。

黄金時代の幕開けの日

まずは、セントルイス・ラムズ(現ロサンゼルス・ラムズ)と対戦した2001年シーズンのスーパーボウル。残り時間1分21秒でスコアは同点、ペイトリオッツは自陣17ヤードラインでボールを保持しており、タイムアウトは残っていなかった。

伝説的な元NFLコーチのジョン・マッデンは「時計を進めるしかない......オーバータイム(延長戦)を狙うべきだ」と試合中継で解説した。未熟なブレイディが、華麗な攻撃で知られたラムズ相手にドライブをかけるのは無理だと言いたかったのだろう。

だがブレイディは短いパスを繰り返し、ラムズの30ヤードラインにボールをスパイク。アダム・ビナティエリが48ヤード地点からフィールドゴールを決めた。この瞬間、ブレイディ率いるペイトリオッツの黄金時代が幕を開けた。

アトランタ・ファルコンズと対戦した2016年シーズンのスーパーボウルでは、友人2人が電話をかけてきて私をからかったほど、ペイトリオッツは低調だった。第3クオーターで28対3と大きくリードされたが、ペイトリオッツはスーパーボウル史上最高の大逆転をやってのけた。

勝利を決めたタッチダウンを除けば、記憶に残るのはスコアが28対12だった第4クオーターでの場面だ。

タックルを受けたファルコンズのQBマット・ライアンがボールをファンブル。敵陣25ヤード地点でペイトリオッツの選手がフリーボールを拾う。ブレイディはといえば、スタジアムの超大型スクリーンを見上げ、見開いた目で一連のプレーを追っていた。ファルコンズと私の友人らにとって残念なことに、彼はチャンスを見逃さなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=最高値更新、CPI受け利下げ期待高ま

ビジネス

米シスコ、5─7月期売上高見通し予想上回る AI支

ワールド

ニューカレドニアに非常事態宣言、暴動の死者4人に 

ワールド

再送-EU、ジョージアに「スパイ法案」撤回要請 「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中