最新記事

パンデミック

新型コロナウイルスが変える都市の未来 食糧安保や監視強化も

2020年4月30日(木)11時43分

都市が繁栄していくためには

前出のマシューズ氏は、新型コロナウィルスにより旅行・観光産業が大きな痛手を被るなかで、観光収入に依存していた都市は経済モデルの全面的な見直しを迫られている、と語る。

欧州最大の観光地の1つであるアムステルダムでは、市当局が今月初め、いわゆる「ドーナツ」モデルを基準に公共政策を決定していくことを目指すことになろう、と述べた。社会システムの構造を「ドーナツ」に見立ててたこのモデルは、より良い生活のために社会的・エコロジー的な目標を重視する考え方だ。

英国のエコノミスト、ケイト・ラワース氏がまとめた概念図によれば、ドーナツの穴にあたる内側の輪が囲む中心部分は、誰もが生存のために欠かせない必要最小限の要素、つまり食糧や水、適切な住居、公衆衛生、教育、医療を表している。一方、ドーナツの外縁の輪が象徴するのは気候変動対策や海洋の健全性、生物多様性といったエコロジー的な目標だ。

この2つの輪の間にあるドーナツの本体部分に、人間のニーズと地球のニーズの双方を満たしつつ、都市が繁栄できる空間があるとラワース氏は言う。

視線を転じれば、人々が職を失いつつあるなかで、普遍的なベーシックインカム(最低限所得保障)を導入しつつある政府がある。

スペイン当局は、市民に毎月現金支給を行う制度を導入する計画を進めていると述べており、ブラジルでは貧困層を対象とした緊急ベーシックインカム制度が可決された。

「ベーシックインカム・アース・ネットワーク」の啓発担当者ルイーズ・ハーグ氏によれば、2007─08年のグローバルな金融危機に際して各国が講じた財政緊縮措置により、社会のセーフティネットが失われるとともに雇用が不安定化した。その結果、ベーシックインカムへの関心が高まっているという。

「危機はあらゆる秩序をひっくり返した」

ハーグ氏は、「今回の危機から学ぶべき最も重要な教訓は、恐らく、医療システムがいかにして私たちの社会や経済を持続させているか、という点だろう。経済の安定はこうした大きな社会の構図の一部分であり、ベーシックインカムは社会を維持するための1つの方策だ」と語る。

「危機が去った後、たとえ大きな政策変更が見られないとしても、現在のシステムが何らかの形で再考されるという希望はある」と彼女は言う。

マシューズ氏は、少なくとも経済という点において、多くの都市はかつてのような形には戻れないだろう、と言う。

「今回の危機は、私たちのシステムの根本的な弱さを完全に暴露し、あらゆる種類の秩序をひっくり返した」と同氏は言う。

「徹底的な再調整が行われることになるだろう」

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・韓国そして中国でも「再陽性」増加 新型コロナウイルス、SARSにない未知の特性
・英、子供が炎症で死亡 川崎病と似た症状も、新型コロナウイルスとの関連調査へ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染47人確認 都内合計4106人に
・ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由.......


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:「オルバン長期政権後」に賭ける投資家、ハ

ワールド

中国がイランに防空ミサイル、供与を準備とCNN報道

ワールド

米とイランの交渉団がパキスタン入り、レバノン停戦な

ビジネス

経産省、ラピダスへの6315億円の追加支援決定 総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中