最新記事

韓国

韓国、新型コロナへの強硬な対応と生活費の支援で、与党圧勝

2020年4月21日(火)17時15分
佐々木和義

スマホのアプリと連動したリストバンドで市民監視

防疫当局は「自宅隔離者安全保護アプリ」を導入する。隔離者の携帯電話にGPSを活用したアプリをインストールして行動を監視するが、アプリの設置は同意者に限られ、4月2日時点のソウルの自宅隔離者9千511人中2千38人がアプリを設置していなかった。また、アプリをインストールしたスマートフォンを自宅に置いて外出する例が相次いでいる。

位置情報システム(GIS)による24時間の監視体制を維持する一方、ソウル市は「AIモニタリングコールシステム」を導入する。安全保護アプリをインストールしていない自宅隔離者に電話をかけて状況を把握するためである。

当局はまた一部の自治体が行なっていた抜き打ち点検を全国に拡大する方針を定めた。自治体の担当者と警察官が週2回、アプリを設置していない隔離者や違反歴がある人の隔離場所を事前連絡を行わずに訪問する。
また、住民が違反者を申告する市民監視システムを導入し、さらにスマートフォンのアプリと連動した電子リストバンドを導入する。リストバンドがアプリをインストールしたスマートフォンから20メートル離れると警報が鳴るシステムである。

緊急生活費の支給の支援策が浮動票の獲得に繋がった

政府や自治体は、強硬手段で新型コロナウイスの拡散防止に取り組む一方で住民への支援も計画する。京畿道はすべての道民に支援金10万ウォンを支給すると述べ、ソウル市は所得に応じた緊急生活費の支給を開始した。

選挙戦中盤の4月6日、野党第一党の未来統合党が国民1人当たり50万ウォンを支給する案を発表すると、共に民主党は所得下位70%世帯への支給を検討していた支援金100万ウォン(4人家族基準)を全世帯に拡大する方針に転換した。仁川市は外国人にも支給する方針だが、ソウル市や京畿道、政府は選挙権がない外国人は対象外だ。

与党の圧勝は予想されていなかった。政策の失敗で景気が低迷し、自営業者や零細事業者など多くの人が困窮している。チョ・グク元法務部長官の任命と辞任も追い討ちをかけた。接戦が予想されたが、新型コロナウイルスに対する強硬な対応と支援策が浮動票の獲得に繋がったとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国が外交攻勢強化、米国の国際的プレゼンス縮小背景

ワールド

豪軍が初のハイマース実弾発射、米日など19カ国の大

ビジネス

FRB議長、本部改修見直しを監察総監に要請=報道

ビジネス

FSB議長の英中銀総裁、各国に市場混乱リスクへの警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中