最新記事

コロナ後

優先するのは経済か人間か、コロナ後の経済再開を巡るトランプとクオモの対立 

New York Governor Cuomo Says He'd Defy Trump Ordering Him to Reopen State

2020年4月15日(水)16時30分
ジェニー・フィンク

復活祭(4月12日)までには経済活動を再開させたいと言ったこともあるトランプ Leah Millis-REUTERS

<外出制限や企業活動停止などで大きな打撃を受けたアメリカ経済を一刻も早く再起動したいトランプに、アメリカで最大の死者を出したニューヨーク州知事のクオモが真っ向から反論>

米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、同州の公衆衛生が危機に瀕すると判断した場合、州内の経済活動を再開するよう義務づける大統領令に従うつもりはないと明言した。

「決して従わない」と、クオモは4月15日、米CNNの番組「ニュー・デイ」で語った。「どうしてもと言うなら州と連邦政府の間で憲法解釈の相違をめぐり、法廷で争うことになるだろう」

「われわれには憲法がある。王ではない」と語ったクオモ(右)


新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために導入された外出規制などの対策は経済に大きな打撃を与えており、失業者の急増や株価暴落を招いている。ドナルド・トランプ米大統領は、国民に早期の職場復帰を働きかけており、一部の州では4月末にも実現したい考えだ。13日には、政権は経済活動の再開に「かなり近づいている」と述べた。

上記の発言の前にはツイッターに、経済活動再開の時期を決めるのは自分であり、各州ではないとの内容を投稿。さらに記者会見では、「最終的な権限は私にある」と述べた。

民主党の有力者でトランプのライバルでもあるクオモは公然と異議を申し立てた。連邦政府と州の権限をめぐる議論は、「建国の父」たちの時代にすでに決着がついており、公衆衛生に関しては州知事が権限を行使すると述べた。

<参考記事>新型コロナと戦う米政治家が大統領候補として急浮上、サンダース抜く

憲法論争に発展?

議会調査局(CRS)によると、合衆国憲法修正第10条は、公衆衛生について各州に権限を与えているが、その一方で、通商条項(合衆国憲法第1編第8節3項)では検疫などの感染防止対策の権限を連邦政府に与えているという。

「ゆえに、各州政府および地方自治体は、それぞれの管轄区域内においては、危険な疾病の拡大を抑える第一の権限を持つ。また、連邦政府は、外国やおよび州間の疾病拡大を防止するために、検疫措置やその他の感染防止対策を実施する権限を持つことになる」と、CRSは2014年の報告書に記している。

ニューヨーク州保健局によれば、同州の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数は19万5000人以上に達し、死者も1万人を超えた。クオモはトランプに対し、大統領令については「その方向では検討さえ行わないように」とくぎを刺している。

トランプは3月13日に国家非常事態宣言を発令し、中国からの入国をほぼすべて禁止した。またウイルスの拡散を抑制するためソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)のガイドラインを示した。その他、不要不急の事業所の休業や、レストランの営業を持ち帰りのみに限定するといった各種の対策の実施に関しては、各州が独自の判断で行ってきた。

どのような感染防止措置を実施するか決断し、住民を説得する責務は、各州の知事に任されているとクオモは言う。トランプは「この問題を各州知事に任せていた」と語った。「私の印象では、大統領は連邦政府の長として、州の問題に口出しするのは好まなかったはずだ」

州レベルでの経済活動再開に関して、トランプができることは各州の知事に助言を行う程度にとどまる可能性もある。

<参考記事>新型コロナのデマ情報を広めるトランプ、それをただす勇者ファウチ(パックン)

(翻訳:ガリレオ)

20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中