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感染症対策

新型コロナ緊急事態宣言で何が変わるか──「ロックダウン」とはどういうものか

2020年4月7日(火)11時15分
松澤 登(ニッセイ基礎研究所)

緊急事態宣言は感染症の全国的なまん延を前提としながら、宣言の発出される地域を限定するという構造となっている3。どの地域を指定するかの判断は難しい。地域は都道府県によって面積や人口、病院・医師の配置状況、感染源がどこまで追えているのか、など個別の事情を勘案することが必要となる。東京都のように周辺自治体からの通勤・通学者が多いところでは、周辺と協調しての対応が必要となる4。

地域の設定には政府と都道府県の緊密な連携が求められる。政府にとっても法に基づく初めての緊急事態宣言となるものであり、医療従事者や感染症にかかる専門的知見を持つスタッフの少ない地方の自治体には負荷が重い。政府あるいは医療研究機関の集中する自治体、特に東京都からの支援も必要となるのではないかと思われる。

さらに難しいのが、緊急事態宣言を実施する期間である。言い換えると、出口をどう想定しておくかという問題である。この点、世界の現状をみると拡散はすれども収束の兆しは見えていない。日本国内だけ収束しても、海外でまん延していれば、第2波、第3波が来ないとも限らない。そして、たとえば、宣言の実施期間を短期間とすれば、経済や国民心理に与える影響は当面抑制できるものの、仮に延長するとなると、失望感からかえって大きな影響を及ぼしかねない。他方、長期に定めれば経済活動の長期停滞を前提に物事が動き、早々に事業をたたむ事業者も出てくるであろう。そのため、いざ経済活動を再開しようとする場合に、大きな支障をきたしかねない。

以上みてきたように、そもそも緊急事態宣言を発出するかどうか、発出するにあたってはどのようなものにするかは、高度に専門的かつ政治的な判断が求められる。法による権利制限は限定的だが、経済への影響は想像もつかない。より多くの方が緊急事態宣言について理解し、感染拡大を抑制しつつ、一日も早い経済回復を目指すことができるような状態に戻していくことができればと思う。

――――――――――
3 都道府県単位で出すことと決まっているわけではないが、対応の中心が都道府県知事となるので、都道府県単位で出すことが自然であろう。
4 ロックダウン・都市封鎖という言葉が意味するところは、この文脈の中で理解しやすい。

Nissei_Matsuzawa.jpg[執筆者]
松澤 登
ニッセイ基礎研究所
保険研究部 取締役 研究理事・ジェロントロジー推進室兼任

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