最新記事

コロナ危機後の世界経済

未曾有の危機には米政府の「景気刺激策」では不十分

IS $2 TRILLION TOO LITTLE, TOO LATE?

2020年4月3日(金)19時20分
マイケル・ハーシュ

スティグリッツによれば、「解決策はあらゆる不動産の立ち退きと差し押さえを止めて、政府が賃金の支払いを保証すること」だ。クレジットカード会社にも「あらゆるローンの利払い猶予」を義務付けるべきだという。

たった数週間で経済が壊滅

トランプ政権は民間の貸付機関に圧力をかけることには後ろ向きだが、連邦住宅局と連邦政府系の住宅金融機関の貸付に関しては、差し押さえや立ち退きを最低60日間猶予すると3月18日に発表した。議会がまとめた超大型の支援策では個人と企業に多額の現金が給付されるが、中長期的な雇用保障や債務返済の猶予は盛り込まれていない。

家計支援には総額約5000億ドルの資金が充てられ、年収7万5000ドル以下の大人には最大1200ドルが給付される。子供のいる家族には追加の支援があり、4人家族なら3000ドルを受給できる。

議会での調整で一番もめたのは企業向けの5000億ドルの給付だ。特別監察官か議会の特別パネルが監査することになっているが、給付の目的ははっきりしていない。

報道によれば、さらに納税者1人につき最大1200ドルの税が還付される。そのほか中小企業の給与支払いを担保するための3500億ドルの支援、最も打撃を受けた業界への直接的な融資、所得税の納入期限の延期や学生と教育機関への金融支援などが盛り込まれているという。

コロナショックによる失業対策として、より長期にわたって給与の100%の失業保険を給付する案も盛り込まれているが、オンラインによる申請が義務付けられるため、システムダウンの懸念がある。「全ての申請者が2週間、いや2カ月以内に受給できるか不安がある」と、スティグリッツはみる。

企業が操業停止中も従業員に給与の大半を支払えるよう政府が補填するデンマーク方式(ドイツとイギリスも最近、同様の方式を採用)のほうが有効だ、とも指摘されている。

英政府は3月20日、企業が従業員にイギリスの平均所得を上回る最大約3000ドルの月給を最低でも今後3カ月支払えるよう、人件費を補塡する緊急支援策を発表した。デンマークはそれより前に従業員の3割、または50人以上の削減が必要な企業に3カ月間人件費の75%を補填する方針を打ち出している。ドイツは企業への人件費補填を増額しただけでなく、4月1日から9月30日まで家賃滞納による立ち退きを禁止した。

「連邦政府のコスト負担で、従業員に給与が支払われるようにすることが非常に重要だ」と、ハーバード大学の経済学者ダニ・ロドリックは言う。「失業の不安を減らすにはそれが不可欠だ。中小企業の債務(負担を軽減する)施策とは別個に(人件費の補填を)実施すべきだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 7
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    男の子たちが「危ない遊び」を...シャワー中に外から…
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中