最新記事

米軍

米空母の新型コロナ集団感染で、中国、イランに対する抑止力に穴

U.S. Navy Coronavirus Outbreak Threatens Preparedness Against China, Iran

2020年3月30日(月)18時10分
カレダ・ラーマン

米空母セオドア・ルーズベルト。艦内の居室は狭くウイルスの「温床」にもなりかねない(写真は3月2日、ベトナムのダナン) Kham-REUTERS

<5000人を超える乗組員の検査を行う間、空母セオドア・ルーズベルトは数日グアムに停泊することを余儀なくされるかもしれない>

航空母艦セオドア・ルーズベルトで新型コロナウイルスの感染者が急増している。集団感染に拡大すれば、中国とイランに対する米海軍の即応能力に悪影響を与える恐れがある、と元NATO欧州連合軍最高司令官ジェームズ・スタブリディス退役海軍大将が危機感を訴えている。

AP通信によれば、ルーズベルトがベトナムの港に寄港した後、乗組員20人以上に新型コロナウイルスの陽性反応が確認された。米海軍は大急ぎで、感染拡大の阻止に取り組んでいる。

艦内で最初の新型コロナウイルス感染者が判明したとき、ルーズベルトはフィリピン海で別の米軍艦との演習に従事していた。

海軍作戦部長のマイク・ギルデイ大将は、感染発生にもかかわらず、ルーズベルトは「地域のいかなる危機にも対応できる」と語った。しかしAP通信によると、5000人を超える乗組員の検査が行われている間、空母は数日間グアムに停泊することを余儀なくされる可能性がある。

米海軍が保有する現役空母はルーズベルトを含めて11隻。その使命は中国とイランに対する抑止力の鍵となることだ。

「海軍は今後数カ月、即応能力の点で極めて厳しい状況に陥るだろう」と、スタブリディスは言う。艦内の居室は狭く、まさに新型コロナウイルス感染の「温床」になりうる。

横須賀基地でも感染判明

3月26日の声明でギルデイは、海軍はルーズベルト艦内におけるウイルスの感染拡大を防ぐために、陽性者の特定と隔離に取り組んでいると述べた。

「私たちはこの脅威を非常に真剣に受け止めており、陽性者を特定して隔離すると同時に、船内でのウイルスのさらなる拡散防止に大急ぎで取り組んでいる」。

さらに陽性者の増加が予想されるため、医療スタッフは乗組員の健康状態を注意深く監視している、と彼は付け加えた。陽性と判定された者は、グアムの米海軍病院に移送されるという。

「私たちは日々、感染対策に取り組んでいる。最優先にしているのは、乗組員を守ることと任務への対応力を維持することだ。この2つは密接に関係している」と、彼は言う。「積極的な対応により、空母セオドア・ルーズベルトは地域のあらゆる危機に対応できると確信している」

3月27日には、別の空母で海軍兵2人のコロナウイルス感染が確認された。フォックスニュースによると、横須賀基地に配備されている空母ロナルド・レーガンの乗組員2人の陽性が判明、米軍は横須賀基地を封鎖した。

<参考記事>中国が2035年までに原子力空母4隻を建造、米軍と並ぶ
<参考記事>米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明までの経緯

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中