最新記事

感染症対策

ミャンマー、新型コロナウイルス初の感染確認 スー・チー自ら手洗いで感染予防訴え

2020年3月24日(火)19時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

自ら手洗いする動画を公開し、感染予防を訴えたアウン・サン・スー・チー  Ministry of Health and Sports Myanmar

<イスラム系少数民族が政府軍に迫害され、難民キャンプで暮らすミャンマーは、クラスターの発生が懸念される──>

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国でこれまで新型コロナウイルスの感染者が公式発表でゼロを続けてきたミャンマーで23日、2人の感染者が確認され、同国で初の感染事例となった。

ミャンマー保健当局によると、2人は男性でともに最近外国から帰国した経歴があり、感染は外国からもたらされた可能性があるとしている。

周辺国での感染者が拡大するなか、ASEANではラオスとミャンマーだけが感染者ゼロを続けてきたことに、国際社会からは検査態勢の不備や医療水準の低さが原因ではないかとの疑問の声が上がっていたことも事実で、今後ラオスの感染状況とともにミャンマー国内で感染が拡大するか注目される。

初の感染者は米、英からの帰国者

ミャンマー保健スポーツ省が23日の夜になって明らかにしたところによると、新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された初の感染者はミャンマー国籍の男性2人。このうちの1人、36歳の男性は13日に米国から、もう1人の26歳の男性は22日に英国からそれぞれ帰国。目立った症状はなかったものの医療機関で検査の結果「陽性」と診断された。このため2人は別々の医療機関で現在隔離されて治療中という。

米永住権をもつ36歳の男性は北西部チン州のテディム病院に入院中で、26歳の男性は主要都市ヤンゴンのワイバルギ病院に隔離中と地元メディアは伝えている。

保健当局ではこの男性2人が入国後に「濃厚接触」した可能性のある人々を現在追跡調査中で、判明次第早急に検査を受けさせる方針という。

もっともミャンマー国内ではコロナウイルス感染に関する検査態勢は不十分で、23日までに全国で実施された完全な形での検査はわずか214人に留まっているとの情報もあり、潜在的な感染者がかなりいるとの見方も根強い。

西部ラカイン州を中心に居住する少数派イスラム教徒のラカイン族の間では、3月初旬からミャンマー軍の迫害を逃れるために隣国バングラデシュに避難した難民キャンプを中心に、コロナウイルスへの感染を危惧する声が高まっている。バングラデシュ保健当局、ミャンマー保健当局の双方から検査や診察といった医療の手が届かず、人権団体などは「クラスター(感染集団)」発生の可能性を指摘している。

また、多数派の仏教徒が寺院などで集団礼拝を行っており、都市部の商店街や市場、公共交通機関での人混みでもマスクを着用する人がほとんどいないなど、感染防止対策が全くと言っていいほど講じられていない。このためミャンマー国内でも感染への懸念が高まっていたことは事実だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 その後急反発

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中