最新記事

新型コロナウイルス

米感染拡大、アジア系住民がヘイト攻撃を恐れて銃器店に殺到

Asian Customers Are Buying Weapons Over Coronavirus Backlash Fears

2020年3月13日(金)13時15分
イワン・パーマー

在米のアジア系住民はヘイト攻撃の対象になることを恐れている(写真は台湾の観光施設) Tyrone Siu-REUTERS

<カリフォルニア、ワシントンの銃器店には通常の10倍のアジア系住民が銃を買い求めて来店>

新型コロナウイルスの感染拡大がアメリカでも深刻化する中、人種偏見による攻撃から身を守るために、多くのアジア系住民が銃を買い求めている。

ロサンゼルス近郊のサンガブリエルバレーで、銃器店「アルカディア・ファイアアーム&セイフティ」を経営するデビッド・リウは、店を訪れる客がここ数週間、普段の10倍になったと話している。

「まったくイカれている。3月3日と4日には、50人以上の客が来店して、(カリフォルニア州の)銃所持許可試験を受けて銃を買って行った。こんな小さな店では本当に異常なことだ」と、リウは本誌の取材に答えた。「どの客も、メディアが『アジア系、中国系は攻撃対象にされる』と言うので来ている」

昨年12月に中国・武漢で新型コロナウイルスの発生が確認されて以降、アメリカではすでに何人かのアジア系住民がヘイトクライム(憎悪犯罪)の対象になっている。

3月前半には、ニューヨークの地下鉄車内で、アジア系男性が他の乗客の男から消臭スプレーを吹きかけられた。男は「彼が私のすぐ隣に立っているからだ。離れろと言ってくれ」と叫び、ウイルスに空気感染するのを嫌がっている様子だった。

2月には、やはりニューヨークの地下鉄構内で、マスクを着けていたアジア系女性が暴行を受ける、ヘイトクライムと見られる犯罪が起きている。

「今こそ武器を手にするとき」

カリフォルニアの銃器店「アルカディア」は、アジア系アメリカ人が多く暮らす地域に店を構えている。

店の客の1人ダーク・チャンは、地元テレビ局の取材に、「(今が)まさに自分たちを守る武器を手にするときだ」と答え、以前だったら妻が銃を家には持ち込ませなかっただろう、と話した。「妻は、新型コロナウイルスの感染拡大を少々恐れている」

リウは、地元社会のパニックは、全米のいくつかの都市が感染拡大によって封鎖されるかもしれないというニュースが報じられるようになってさらにひどくなった、と話している。感染拡大に動揺しているのは、アジア系住民だけではない、と言う。

「銃の卸業者に確認したが、ほとんどの在庫が無くなっている。中華系だけでなく、アメリカ人全体が銃を買い込んでいる」と、リウは話している。「ほとんどの中華系住民は銃を持っていない。だから今、買っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え

ビジネス

村田製作所、マイクロ一次電池事業をマクセルに80億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中