東京五輪、延期決定の舞台裏 日本とIOCが読み誤った国際世論
関係筋によると、IOCは当初、22日の理事会を開くことで「少し時間を稼ぐ」ことができるかもしれないと期待していた。
IOCのディック・パウンド委員(カナダ)は、中国や日本で感染の状況が沈静化の方向に向かう中、IOCと日本は米国などで起こった感染者数の「対数的な増加」を目の当たりにするまで、決断をすることができなかったのだ、と指摘した。
「たとえ日本が(ウイルスを)制御できている状況であっても、世界のその他の国ではそうではない、ということに、ようやく彼ら(日本とIOC)は気づいたんだと思う」とパウンド氏はロイターに語った。
同氏は、感染拡大が止まらない現状では、アスリートが適正な形で練習を行うことはできないことが明らかになったとし、とりわけチームスポーツや格闘技では他選手と「安全な距離」を保つことは困難だと述べた。
カウントダウンは止まった
五輪準備に関わる日本ウエイトリフティング協会理事の知念令子氏は、カナダやオーストラリアが2020年大会への不参加を表明する中、東京に決断を迫るプレッシャーが強まっていったと語る。
聖火リレーは、2011年の震災で被災した福島からスタートするはずだったが、聖火ランナーに選ばれていた女子サッカーの川澄奈穂美選手は、所属する米プロリーグから帰国する際のリスクが高いとして、辞退を表明した。
ある組織委員会関係者は、開催延期がもはや避けられないことはわかっていたという。「聖火リレーの準備は続けざるを得なかった。もし中止したら、それはオリンピックを延期を意味してしまうから」と同関係者は打ち明けた。
五輪開催の延期という日本とIOCの歴史的な決断から一夜明けた25日、東京駅に設置されたオリンピック時計は開催までの日数表示をやめた。いま、その時計に新たな開催日へのカウントダウンはない。
(取材協力:梅川崇、山崎牧子、白木真紀、田実直美、新田裕貴、宮崎亜巳、安藤律子、Antoni Slodkowski、木原麗花、斎藤真理、村上さくら、Ju-min Park、山光瑛美、Nathan Layne 英文記事編集:Philip McClellan 日本語記事編集:北松克朗、久保信博)
*文中の文字一部修して再送します。
[東京/ローザンヌ ロイター]

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