最新記事

北朝鮮

トランプの制裁解除できない金正恩 国民に「長期戦」呼びかけ

2020年2月4日(火)09時19分

軌道修正

2011年に政権を掌握して以来、国民の生活水準を着実に向上させてきた金正恩氏は2018年、核開発プログラムの「完了」により、政府は経済発展に注力できるとまで宣言した。ところが、制裁解除にこぎ着けられないため、同氏の立場は微妙になっている。

アブラハミアン氏は、金正恩氏の下で経済が改善すると期待してきた北朝鮮国民にとって、足元が懸念すべき局面になっているのは間違いないと述べた。

専門家の分析では、こうした中で最近発せられているメッセージは、金正恩氏が2019年末に行った演説を補強する格好となっている。同氏は国民に「困難かつ長い闘争」に備え、制裁解除の時期が遠のいたので、自立的な経済を育て上げろと訴えた。

さらに同氏は、この演説を「軌道修正」の機会に利用した。かつて北朝鮮はもう「ベルトを締める(窮乏する)」ことはないと明言したが、しばらくはベルトを締めなければならないかもしれないと認める機会にしたからだ。

それでも北朝鮮情報の独立系専門サイト、NKニュースのアナリスト、レイチェル・ミンヨン・リー氏によると、国営メディアなどは金正恩氏の以前の約束があるために、あまり大々的に先行きの苦難を伝えていない。リー氏は「論議を呼ぶ言い回しであるため、北朝鮮当局は極めて注意深く、国民に浸透させようとする公算が大きい」とみている。

北朝鮮の複数の高官は、米国に非核化交渉期限は2019年末だと通告した際に、譲歩しなければ「新たな道」を選ぶと警告。その後、金正恩氏が、世界は近く「新たな戦略兵器」を目にすると発言していた。

そして、特に波乱が起きないまま年を越え、北朝鮮の国営メディアは米国との交渉に関して不気味な沈黙を守っている。リー氏は「彼らは時間を稼ぎ、対米を含めた外交政策に何らかの修正を加えようとしているのではないか。『新たな戦略兵器』の公表が近づくとともに、自分たちの意図をより明確にさせるのかもしれない」と話した。

Josh Smith

[ソウル ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、原油生産を日量400万バレルに引き上げる計

ビジネス

ECB、最近の指標で利下げへの自信強まる=チポロー

ワールド

ラファにイスラエル軍の空爆、パレスチナ人少なくとも

ワールド

韓国と中国、外交・安保対話開始へ 3カ国首脳会合前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 9

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 10

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中