最新記事

温暖化対策

気候変動で自国脱出する「環境難民」急増に備えを 国連UNHCRが呼び掛け

2020年1月22日(水)11時18分

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグランディ高等弁務官は21日、気候変動の影響で自国を逃れる「環境難民」の急増に世界各国が備えなければならないと述べた。モザンビークのペンバのサイクロン被災地で昨年5月撮影(2020年 ロイター/MIKE HUTCHINGS)

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグランディ高等弁務官は21日、気候変動の影響で自国を逃れる「環境難民」の急増に世界各国が備えなければならないと述べた。難民は数百万人に上る可能性があるとした。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に合わせてロイターのインタビューに応じた。

国連人権理事会(UNHRC)は前日、気候変動を理由とした難民申請を各国政府が認めるべきとする初の判断を下した。きっかけは太平洋の島国、キリバス出身のイオアネ・テイティオタ氏が、気候変動を理由にニュージーランドに難民申請を行い、申請を却下されたため、UNHRCに申し立てを行ったことだった。グランディ高等弁務官は判断について、気候変動で自国を逃れる人を各国が受け入るべきだと説明し、各国に広範囲な影響があると述べた。

グランディ氏は「判断の下、気候変動や気候の緊急事態により差し迫った脅威がある場合、人々は他国から自国へ送り返されてはならない。戦争や迫害などと同様に命に危険が及ぶからだ」と指摘。「意思に反して自国を離れる人が急増する事態に備えなければならない」とし、「具体的な人数は推測になるため出さないが、確実に数百万単位だろう」と述べた。

自国を逃れる要因としては、オーストラリアで見られたような山火事や、海抜が低い島国に影響する海面上昇、サハラ以南のアフリカにおける穀物や家畜への打撃、先進国でも見られる世界的な洪水などが挙げられる。

70年前に設立されたUNHCRは、紛争の影響で貧しくなった国を逃れる人たちを支援してきた。気候変動に関する今回の判決は、これまでよりも難民の定義を特定しておらず、先進国の人も対象となる。

グランディ氏は「難民の移動のほか、より広範な移民人口の問題が世界的な課題であることを示す新たな証拠だ」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去

ビジネス

「空飛ぶタクシー」の米ジョビ―、生産能力倍増へ 

ビジネス

ドイツ経済、26年は国内主導の回復に転換へ=IMK
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中