最新記事

新型肺炎

中国政府、武漢の交通遮断で新型肺炎を封じ込め

China Is Quarantining a City of 11 Million to Contain the Coronavirus

2020年1月23日(木)15時45分
クロエ・ハダバス

新型コロナウイルスの発生源として「隔離」される中国湖北省の武漢市(後ろは患者を運ぶ医療関係者、1月20日) REUTERS

<春節の大型連休を間近に控え、人口1100万人の大都市の公共交通を遮断するという異例の措置がとられた>

中国政府は1月22日、新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めるために、感染が多発している武漢市の公共交通機関の運行を一時停止すると発表した。人口1100万人の大都市で人の移動を大幅に制限する異例の措置だ。

肺炎のような症状を引き起こすこのウイルスは抗生物質が効かないため、感染拡大への懸念が高まっている。人民日報系のタブロイド紙である環球時報によれば、中国ではこれまでに計548人が新型コロナウイルスに感染。武漢市当局の22日の発表によれば、これまでに少なくとも17人が死亡している。

中国中部における交通の要所である武漢の交通遮断は、23日の午前10時から始まった。当局は市民に対し、「特別な理由」がない限り武漢を離れないようにと警告している。

中国は25日に春節(旧正月)を控えており、その前後は一年のうちで人の移動が最も活発になる時期のひとつ。40日間にわたってさまざまな儀式や行事が行われ、延べ30億人が国内を移動する。一部の人にとってはこの時期が唯一、帰省して家族と過ごせる機会だ。

<参考記事>新型肺炎パンデミックの脅威、真の懸念は中国の秘密主義

中国市民からは政府批判

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで人の移動が増えることを懸念する中国の保健当局は、旅行者に武漢行きを控えるよう勧告している。こうした措置は、中国経済に深刻な打撃をもたらす可能性がある。2019年の例を見ても、春節前後に中国市民が旅行に費やした金額は総額740億ドル、買い物に費やした金額は1450億ドルにのぼるからだ。

WHO(世界保健機関)は、中国政府の一連の対応を高く評価。テドロス・アダノム事務局長は22日午後の会見の中で、「きわめて強力な措置を取っている」と中国政府を称賛した。だが一部の市民は、政府による情報公開が遅かったと指摘。2002年と03年に流行し、700人以上の死者を出したSARS(重症急性呼吸器症候群)発生時と同様に、今回も対応が後手にまわったとして、無責任だと政府を批判している。

新型コロナウイルスはSARS同様にヒトからヒトに感染し、既に東アジアの複数の都市に感染が広まっており、そのほかの地域にも飛び火している。中国疾病予防コントロールセンターは、同ウイルスは「非常に感染力が強い」と断定。一方WHOの緊急委員会は22日、今回の感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当するかどうかを判断するには、さらなる情報が必要だとして判断を保留した。

<参考記事>アメリカで初の新型肺炎患者 WHOは「緊急事態」宣言か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中